【実.況.者】まるで覚めない夢みたく【短編集】 (ページ27)

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ゼロ周年記念日 /rtrt ページ27

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「...あ、そうだ。レトルトに渡すものあったんだ」

そう言って鞄を漁るAを少し待っているともうほとんど食べ終わって空いた机に綺麗に包まれたものが置かれた。

そっと手に取って開けると、...ネックレス。

「うお、かっこよ...こんなん貰ってもいいん？」

「十一年間頑張ったご褒美だからいいの！」

「...Aには貰ってばっかりやなあ」

律儀に、記念日にはプレゼントを用意してくれるAに申し訳なくすらなって眉を下げて笑う。

でも喜んで欲しくて選んでくれたんだろうから有難く受け取ることにした。

「......なあ、A。お返し...じゃないけど俺からのも貰ってくれる？」

「えっ？だって今日はレトルトの日なのに...」

「じゃあ、新しい記念日にしたらええやろ？」

ニヤッと口角をあげたつもりだけど、笑えているだろうか。

ポケットから小さな箱を取り出してAの前に差し出した。

「俺と...結婚、してください」

「......はい」

目にいっぱい涙を浮かべて頷くから、箱から指輪を取り出して細い指に優しくはめた。

そしたらついにAの涙が溢れてくるから、やっと俺の気持ちも落ち着く。

「そんな泣かんといてよー。俺笑った顔のが好き」

「だって...！心の準備出来てなかったし...」

「サプライズやからなあ。...これからも隣にいてほしいからさ？」

いつまでもAに甘えてばっかじゃ駄目だと思ったからこの日言うことに決めたけど、一歩踏み出すまでにはかなりの勇気が必要だった。

それでも一歩踏み出したのは、Aの笑顔が見たかったのとそばにい続ける為。

「何年も待たせてごめん。これからも隣にいてくれる？」

もちろん、と笑った顔に世界で一番綺麗だと思った。