【実.況.者】まるで覚めない夢みたく【短編集】 (ページ3)

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抱えきれない甘いをあげる /ky ページ3

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ピンポーンと家中に響くインターホンの音に重い腰をあげて玄関へと向かう。

玄関のドアを開けると小さな女の子が大きな魔女帽子を被って立っていた。
そのせいで顔は隠れていて見えない。

「Trick or treat！」

そうか、今日はハロウィンか。

近所の子供が色んな家にお菓子を貰いに回ってるのだろうな、と分かったが俺の家にお菓子なんてあっただろうか。

やけにネイティブな発音だなと思いつつちょっと待ってろ、とリビングに探しに行こうとして振り返ると後ろから不満そうな声が聞こえた。

「せっかく可愛い彼女が帰ってきたっていうのにおかえりも無しですかあ？」

「...A！？えっおま、今アメリカにいるんじゃ...」

大きな帽子から顔を覗かせたのは俺の彼女だった。

数ヶ月前から仕事でアメリカに行っているはずのAがここにいることに驚いているとイタズラに笑った。

「ふふ、ただいま」

「...お前さあ...帰る時は連絡しろっつったろ...」

「サプライズだよ！...それで、お菓子は？」

可愛らしく首を傾げたAは両手を出した。
...ああ、これはラッキーだ。

「お前が今日帰ってくるなんて思ってなかったからねえよ。残念でしたー」

「ええ！？サプライズが裏目に出ちゃった！？」

嘘でしょ、と嘆くAをとりあえず家にあげてリビングへ歩いていく。

そして前を歩くAを後ろから抱きとめてそれで？と問う。

少し照れながら俺を見上げたAに今度は俺がニヤリと笑った。

「イタズラは、何してくれんの？」

俺お菓子持ってないけど、と笑うと固まってしまった。
慌てる姿が可愛くてつい笑みが溢れる。

「はい、時間切れー。もう無効だからね」

どうせAもお菓子何て持ってないだろ？

数ヶ月ぶりに会ったんだ、今日くらい甘い夜を過ごさせてくれよ。

「A、トリックオアトリート」