背伸びとあと少しの愛/ky ページ19
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どうしたんだろうとキヨの見ている方を向くとそこは公園だった。
何人かの小さな男の子が元気そうにサッカーをしているのが見えた。...ああ。
「そういえばキヨ、明日試合だったよね?」
「あー...うん」
何とも言えない顔をしているキヨはたまに見る。
三年が抜けてキャプテンになったキヨは責任とかプレッシャーを感じてしまうのだと前に言っていた。
そしてそれを絶対仲間には見せない。
だから私にだけ頼ってくれればよかった。
「頑張れ」
「...うん」
「頑張れ、キヨ」
大丈夫とかキヨなら出来るとか、そんな無責任な言葉は言えなかった。
たくさん頑張ってるのを誰よりも見てきたから。
少しずつ綻んでいくキヨはありがとな、とさっきと変わらない笑顔を浮かべた。
「なあA、いっこだけわがまま言わせて」
「うん。私に出来ることなら」
「Aから、ちゅーして?」
元気になったと思ったら...と呆れ顔になると早くーと急かしてくる。
もうこうなったらキヨは私の意見を聞かない。
「...ねえしゃがんでよ」
「ははっちっちゃいな」
精一杯の背伸びは届かない。意地悪だ。
ちっちゃいって認めるからさっさとしゃがんでよ、と言いかけた時。
一瞬の間に、私達の距離はゼロになった。
「時間切れでーす。...これで、頑張るから」
「はっえっ...が、頑張れ」
ニヤニヤと笑うキヨにいたたまれなくなって目を逸らした。
私からならまだ心の準備が出来ると思ったのに結局不意打ちだったからそんなものない。
勝たなきゃ許さないからね、と背中を叩いて夕焼けの道を歩き直した。
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作者名:ユシア | 作成日時:2019年10月31日 20時