【実.況.者】まるで覚めない夢みたく【短編集】 (ページ18)

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背伸びとあと少しの愛/ky ページ18

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グッと背伸びをしても、あと少し届かない。

図書室の棚がこんなに高い必要は無いと思うんだけど、と愚痴を零しながらはあ、とため息をついた。

椅子を持ってくるのは面倒だというずぼら精神をどうにかするべきかと思ったけど、もう一度精一杯の背伸びをした。

「うー...もうちょっと...」

「これ？」

後ろからすっと伸びてきた手の主にそう、と頷くと私の苦労はなんだったんだというくらいあっさりと取ってくれた。

首を後ろに倒して相手を見ると ___

「あれ、どうしたのキヨ」

「どうしたのじゃねーから！今日一緒に帰るって言ったのに教室行ってもいねーし」

「ありゃ、そうだったーごめんね。ありがと」

渡された本の貸出を済ませて図書室を後にした。

外に出た瞬間冷たい風が刺してくるようでキヨにぎゅっとくっついた。

「ってかAちっちゃいよなー何センチ？」

「...ひゃくごじゅう」

「はい嘘ーこの間あと0.5センチだったって悔しがってた癖に」

「絶対にあの日から伸びたもん！！」

へえー？って笑うその顔と無駄に高い身長にムカついて頬が膨れていく。
見上げるの首痛いんだからね、と少し睨む。

「っていうかキヨが大きいだけなんじゃないの？」

「それもあるかもだけど、Aも相当小さいからな？」

嫌味たらしく言ったのに煽り返されてしまった。
でもたった一言で機嫌が治ってしまうから本当に敵わない。

...多分、私が単純なだけ。

「まあそこが可愛いんだけど？」

こう言ったら私の機嫌が治るの絶対知ってる。ずるい。でも憎めないからなあ。

そう思っているとふとキヨが立ち止まった。