【実.況.者】まるで覚めない夢みたく【短編集】 (ページ2)

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初めからの決定事項 /uszw ページ2

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ハロウィンである今日は主に女子の間でお菓子の交換がされていた。

俺の彼女も同じで、さっき友達同士で手作りのクッキーを交換しているのを見かけた。

放課後、クラスの違うAを迎えに行って一緒に歩き出す。

Aが持つ紙袋に入ったたくさんのお菓子を覗き込んでバレンタインみたいだな、と言うと嬉しそうに笑った。

「それで、俺にはくれないの？」

「...えっと、...な、ないです」

目を泳がせてAはそう言った。

...お前嘘下手なの分かってる？と問い詰めるとやっと話してくれた。

まとめると俺にあげようと作ってきたクッキーを落として割ってしまったらしい。
もう予備も配りきってしまって、ないとのこと。

「別にそんなことで怒んねえよ。...その割れたクッキーねえの？」

「えっあ、あるけど...」

「ちょっと見せて」

控えめに差し出してきたクッキーは確かに粉々になっていた。

でも色んな形があって、甘いものをあんま食わない俺の為か茶色く染まったそれは十分に幸せなものだった。

袋を開けて欠片を口に入れるとAは焦って止めてきたが別に落としただけだろ、といくつか口に入れる。

「旨いじゃん。俺の為に作ってくれたんだろ？...ありがとな」

少し乱暴に頭を撫でると軽く抵抗しつつも嬉しそうだったので俺もつい笑う。

その姿が可愛くて少し意地悪がしたくなった。
...まあ今日はハロウィンだし、ちょっとくらいは許されるだろ？

「...でも最初から素直に言わなかったから、イタズラはするけどね？」

「...へっちょっそれは聞いてな」

「はい拒否権なしデース」

顔がサッと青ざめたAの手に、逃がさないように力を込めて俺の家の方に進んでいった。