繋いだのは鈴の音 /rt ページ16
.
チャリン、と鈴の音がした。
音のした方を見れば鍵が落ちていて、それを落としたらしい女性は気付いていなかった。
...声、かけた方がいいよな？
そう考えてる間にもどんどん歩いていってしまう。
ああ、もう！
「あの、鍵落としましたよ！」
「...えっ、あ、ありがとうございます！すみません全然気付かなく...て...」
いや全然大丈夫なんで、と目を合わせずに立ち去ろうとしたら女性の声が小さくなってく。
なんや？と顔を見上げると「やっぱり！」と目を輝かせていた。
「レト君だよね？久しぶり！」
「...もしかして、Aちゃん？」
雰囲気が違って一瞬分からなかった。
そりゃそうか、最後に会ったのは高校の卒業式だ。
あの頃の何倍も綺麗で大人っぽくなってるAちゃんに心臓がうるさい。
伝えることはしなかった恋心が再熱した。
「あっ、鍵ありがとうね。家に入れなくなるとこだったよ〜」
「気を付けるんやで？おっちょこちょいなとこ変わらんなあ」
あの頃もよく物を失くしたりコケたりしてた。
その癖へこまずポジティブだったから、そういう底抜けに明るいところに惹かれたんだ。
えへへ、と照れ笑いを浮かべる姿が少し幼く見えて安心したところで突然ぽつ、と地面に染みができた。
「あれ、今日の予報晴れだったのに...」
どんよりとした雲を眺めてAちゃんが不思議そうに呟いている。
久しぶりに会えたけどもう話せんのか。
...次に会うことなんて、奇跡でも起きない限りないんだろうな。
そんなことを考えてるせいで雨はすぐに土砂降りになった。
「レト君！雨宿りできるとこ探そ！」
え、という間もなく腕を引かれて思わず同じように走る。
少しずつ濡れてく服の不快感よりも一緒にいる時間が増えた幸福感の方が上回っていた。
.
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユシア | 作成日時：2021年2月14日 23時
