カクレモノ【全.身.組】 (ページ45)

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『さて、貴女は何を望みますか？富も、地位も、才能だって思い通りです』

「...本当に、何でもいいの？」

どこか弾んだ声で私の返事を待つゲームマスターは私のことをなんだと思ってるのか。
何でも叶うのなら願いは一つしかない。

「...2人を元の世界に返して」

『...つくづく人間というものは分かりませんね。今貴女はどんなものだって手に入れられるのに、それを捨てるつもりですか？』

「私はお金も名声もいらない。あの2人がいることが私の願い。それはこの先だって変わらない」

心からの本心だった。
私一人が何かを手に入れてもそこにきっと意味何てないから。

そこまで言うとため息をつきながらも願いを叶えてくれるようだった。

『...構いませんが、お二人を別々の場所には戻せませんよ』

「もちろんそれでいい。つまり2人が同じ場所で目を覚ますってことでしょ？」

『......身内の一人や二人、いつかはいなくなるものですよ。関係を持つことに何の意味があるんでしょうか』

「...私達皆バカだからさ。今が楽しければそれでいいの。今楽しいのは、あの2人がいるからだよ」

私の言葉に納得はしていないようだったがそうですか、とだけ呟いて再び私を光が襲った。
もうこれから先ゲームマスターに会うことはないだろう。

貴重な体験をさせて貰ったことに軽くお礼を言ったら呆れられた。
あと、最後に一つだけ。

「貴方にも、大切に思う人が現れるといいね」

その直後、私は自分の部屋にいた。
ゲームマスターの呟きも届かないまま。

『...私も人間のように生きられたら良かったんですがね』