カクレモノ【全.身.組】 (ページ21)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:15,423 hit

. レトルトside ページ21

.
「...Aちゃんの期待に答えられるかは別として、頑張らなあかんよなあ」

思わず苦笑いをして近づいてくる足音を待っていた。

呑気に角を曲がってきたキヨ君と目を合わせる。
そして口角を上げ、一歩踏み出した。

「さいっあく！！レトさん俺のこと好きすぎじゃない！？」

「キヨ君がオニになりたいだけと違うんか！？」

んなわけねーだろ、と叫びながら走ってるくせに差はどんどん開いていく。

残り時間は約5分。
そんな短い間しかないのにAちゃんが俺に囮を頼んだのは、それほどキヨ君が鋭いから。

どれだけ上手く嘘をついても、双子だとやっぱりバレてしまうらしい。
念には念を、ということで使われた時間稼ぎ要員は俺。

残り時間2分くらいまで追いかけてればいいか、と足を止めた。
キヨ君の姿は曲がってしまった為見えないが、何となくは分かる。

3階であるここはもう上への階段がない。
なら2階で先回りすればいいだろう。

「キヨ君は知らんのやろうなあ...近道」

3階の一番奥にある教室の特定のタイルを踏めば、一人は降りられそうな穴ができる。

そこからふっと飛び降りて、2階へ降りた。
結構な高さはある筈だが痛みが全く無いのはこの世界が異常だからだろうか。

「冷静に考えてまうなんて、俺も結構おかしくなってるんやろなあ...」

そう笑うと全力で走る足音が近付いてきた。
はい、みっけ。

教室の扉をガラッと開けると目の前にいたキヨ君は逆方向へ走っていった。

「レトさんどこにでもいんじゃん怖いんだけど！！」

馬鹿やなあと笑いながら走るのは、結構体力を使う。
そろそろ疲れてきたなあと思っていたら、1階の窓からAちゃんが顔を覗かせていた。

そっち行けばいいんか、と思いキヨ君を追い詰めていった。