私の彼氏さん (短編集1)

体調不良(鈴村健一) ページ23

今日は大切な人の誕生日。

二人でお祝いしようと前から準備していた…


でも、朝起きたら38.5℃
頭痛と吐き気が凄い。

もう。最悪ッ、



イライラする頭を抑えながらも彼に電話をかける。








「もしもしぃ〜？」


少し間延びした優しい声が聞こえた



まだ何も言ってないのに、声を聞いただけで涙が出てきちゃって。






『…ｯ、健一、ごめｯ…、』




しゃくりあげながら 謝ろうとしてるのに
涙と嗚咽しかでてこなくて


もっと言いたいことあったのに
子供のように泣くことしか出来なくて








そんな私に静かに彼は言った。

「A、今家か？」





『？…うん。』






それだけ返事をすると電話が切れてしまった。





そしてそのあと何度かかけ直したけど
出てくれなかった。



感情が整理できないまま電話を切られたことが悲しくてそのままベットに倒れ込んだ





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玄関から鳴っているチャイムでふと目を覚ました。




だるくて重い身体を起きあがらせてインターホンも確認せずに扉を開けた








そこにいたのは




健一だった。







『…ぇ、なんで。』




困惑する私を他所に笑顔で言った。



「電話じゃ伝わんないものもあるからな。」



「急にAに会いたくなったんや、」





その言葉と気遣いの優しさに私はまた涙を流した。









部屋に入れ、二人で話すことにした。


『あのね…、今日は健一の誕生日だから、いっぱい楽しんで欲しかったから、』



ぽつりぽつりと話し始める私をじ、と見ていてくれる健一



『色んな場所探したり、ケーキ予約したり色んな事やってあげたかったのにッ…、』


ぅッ、と涙がこみ上げてくる。
まだ、ごめんねまで言えてない。



『なのにっ…なのっ。なのに…、』


嗚咽混じりに言ってるからきっと健一には何言ってるかわかんないと思ってた。

拒絶されたら笑われたら嫌われたら
そんな恐怖が心を渦巻いた。




でも、健一は、私の言葉を聞いて




「ありがとう」




その一言だけ、その一言で私の全てを包んでくれた。そして未だに泣きじゃくる私をあやす様に抱きしめてずっと肩を叩いてくれた。





『ごめん…、ごめんッ、ねっ、』


「謝んないで。俺の誕生日やで。俺がしたいことするんが誕生日だからな。」




全部を包んでくれる彼の優しさ

鈴村健一。

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