私の彼氏さん (短編集1)

寝坊(岡本信彦) ページ2

とある朝。



『信くん……、ねぇ、信くん 、』

「……ん……A、？」



とんとんとん、と彼の肩を叩く
喉を調整中ということで寝るときはマスクの信くん


目を開ければふにゃりと力の抜けた笑顔を見せてくる。
グラビアの写真や雑誌にも決して撮られない私だけが見れる特別な顔。









『起きて、信くん。』


「ん……ぅ……、まだ……。」




なかなか起き上がってくれないからまた声をかける
すると、拗ねてしまったのか寝返りを打って反対側に身体を動かしてしまう。


先月大きな会場で大勢のファンを恋に落とした人とは思えないほどの我儘ぶり。


本当はゆっくり寝かせてあげたい。
ゆっくり休ませてあげたい。






私もそうしたいの。



でもね……
ごめんね。信くん









あのね……









『もう 8時だよ 』

「えぇ？！」



流石に驚いたのか ばん、と起き上がる信くん


『7時に一回起こしたんだけど、ごめんね』

「僕、二度寝してた……？」

『そりゃもう、ぐっすり』



私の言葉を聞くや否か、ダッシュで部屋から出てゆく。
間に合うといいな……。




「明日ね、仕事が早まったんだー、」
「8時半。」



昨日あれだけ忘れないようにしてたのに、
相当疲れてるんだね。


「A〜！手伝ってぇ〜、；；；」

どたばた焦ったような泣きそうな声が聞こえる


『ん、良平さんには連絡しといたよ。』


「本当？！、大丈夫、間に合わせます〜って、！！、」



信くんは、決して人を責めない、普通なら
「なんでおこしてくれなかったの〜」とか言うけど

信くんは人のせいにしない


『信くん、髪の毛はねてるよ笑笑』

「あ〜！い、いってくるね！ごめんね！」







ちゃんとしてる人でもたまには寝坊します。

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