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ーーコンコン
突然のノック音に、慌てて寝たふりを決め込む。
答えが出ていない今はまだノゼルさんの顔をまともに見れる気がしなかった。
「まだ寝ているようだが…。」
誰かに語り掛けるような言葉が聞こえ、気付かれないように薄目を開けてそちらを見てみれば見慣れた姿がそこにはあった。
「人の気配がある中ではすぐに目覚めるだろう。」
「…私は少し外す。」
「あぁ。」
僅かな
どうしようか、何故団長がここに、等と逡巡していても状況が変わるわけでもない。
(今起きたとこみたいに……)
ぱちり、と目を開けばこちらを見ていた団長と目が合ってしまった。
「寝たふりはもういいのか?」
「お、おはようございます…。」
少し意地悪そうに笑った顔を見て苦笑いを返しつつ体を起こせば、それを補助するように手が伸びてきた。
「団長、どうしてここへ?」
「安静にしとかねばならないはずの団員が消えたと医療棟から連絡があってな、ここではないかと踏んで来てみたんだ。」
「あ…ごめんなさい…。」
「連れ出したのはあいつだろう?Aが謝る必要は無い。」
ポンポンと頭を撫でられる。
心地良いその感覚に身を委ねれば、心がホッと落ち着いた。
「…ノゼルから、聞いた。」
何をとは聞かずにじっと耳を傾ける。
十中八九、つい先程交した話の事だろう。
こんな時私は一体どんな顔を、反応をすればいいのだろうか。
「私は、Aの幸せを願っている。遅かれ早かれぶつかる問題でもあるだろう。今後の人生でいずれどこかに
「団長…。」
「そうだな、団長としてであれば非常に惜しいが。」
そう言って少し寂しそうに笑う団長。
私の想いとノゼルさんの想いを全て汲み取った上で団長は私の背を押してくれるのだ。
この好機を無下にするな、と。
その上で一人の団員としても惜しんでくれている。
それは私にとって最高の誉れに等しい。
私は、その一言で踏み出せる。
「フエゴレオン、団長…っ!!」
勝手にこみ上げて来る涙をそのままに呼べば、困ったように笑いながらも私の涙を拭ってくれる。
(あぁ…団長、私は本当に…)
なんと周りの人に恵まれた事だろうか。
視界が明るく暖かく、涙でぼやけた。
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夏冬 - ほんっっっっっとに面白かったです!!そして幸せな気分になれました!!!こんなにいい小説は久しぶりです!!!本当にこの作品を作ってくださってありがとうございました!!!!感謝しかないです!!! (6月16日 21時) (レス) @page50 id: 770d92d812 (このIDを非表示/違反報告)
雑草のかきあげ(仮垢)(プロフ) - あ''ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ好きです!!!!!きゅんきゅんが止まりません!!!!!作者様は私をキュン死させようとしているのでしょうか!?!?!? (2022年9月6日 7時) (レス) @page50 id: dc942b8391 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 読み応えがあり泣き笑い、本当に面白かったです!!! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 一気に読ませていただきました。表現が細かいのにしつこさが無く、素人特有のわざとらしさも感じられなくてプロなんじゃないかと感じるほどの内容と読みやすさでした。続編、もしくは新作楽しみにしております。素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年7月8日 15時) (レス) id: b410464f01 (このIDを非表示/違反報告)
さらちゃん - 素晴らしい作品でした!1日で一気読みさせて貰いましたが最初から最後までキュンキュンさせていただきました(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年6月13日 13時) (レス) id: 498426d70a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋毬 | 作成日時:2019年5月12日 23時