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拉致 ページ5

起きた時から妙な胸騒ぎがしていた。
それがまさかこんな形で現れるとは。


「兄上ぇぇ!!!大変ですっ!」


早朝、部屋へと駆け込んで来たレオは顔面蒼白。
肩で息をしている所を見ると相当な勢いでここまで走ってきたのだろう。
嫌な予感は大体当たるものだ。
努めて冷静を装って、その内容を促す。


「Aが…Aがっ……!!!」


その名を聞いて瞬時にいくつかの可能性が浮かんだ。
事情をレオに打ち明けたか。
ここ数日の無理が祟って倒れたか。
それとも何か他の事だろうか。


「落ち着け、Aに何があった?」


すぐにでも動けるように意識を向けつつもそう問えば、ようやく少し息を整えたレオが放ったのはとんでもない言葉だった。


「Aが、(さら)われましたっ!!!」


背に冷たいものが流れる。
攫われた?何者かがここまで入り込んだというのか?犯人は?前回の奴らが性懲りもなくまた来たのだろうか?バカな、ここは紅蓮の獅子王の拠点。
国境から警戒態勢なのに辿り着ける筈が無い。
ならば一体…。


「レオ!おまえが居ながら易々(やすやす)とそれを許したのか…!?」


そこまで言って、気付く。
レオはここまで全力で走ってきたようだが戦闘をしたような風体ではない。
そもそも拠点内での戦闘であれば自分が気付かぬ訳が無いのだ。


「わかるように話せ。何があった?」

「朝、拠点のすぐ外でAを見つけて、寝てないと言うので無理にでも寝かそうと部屋に連れて行く途中で…!一応抗議はしたんですが全く聞いてもらえずそのまま…。」

「……待て。抗議だと?」


どうやらレオも混乱しているらしく、話の要領が全く掴めない。
だが分かってしまった。
レオがあまり強気に出れず、かつAを奪い去ることが出来る者など一人しか思い浮かばない。


「姉上はAをどうするつもりなんでしょうか…。」

「…何気にずっと気に掛けていたようだから、まさか殺しはせんだろう……。」


兄弟が揃って溜め息を吐いた。
不眠状態のまま拉致されてしまったAの身を案じながら。

・→←夜



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夏冬 - ほんっっっっっとに面白かったです!!そして幸せな気分になれました!!!こんなにいい小説は久しぶりです!!!本当にこの作品を作ってくださってありがとうございました!!!!感謝しかないです!!! (6月16日 21時) (レス) @page50 id: 770d92d812 (このIDを非表示/違反報告)
雑草のかきあげ(仮垢)(プロフ) - あ''ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ好きです!!!!!きゅんきゅんが止まりません!!!!!作者様は私をキュン死させようとしているのでしょうか!?!?!? (2022年9月6日 7時) (レス) @page50 id: dc942b8391 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 読み応えがあり泣き笑い、本当に面白かったです!!! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 一気に読ませていただきました。表現が細かいのにしつこさが無く、素人特有のわざとらしさも感じられなくてプロなんじゃないかと感じるほどの内容と読みやすさでした。続編、もしくは新作楽しみにしております。素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年7月8日 15時) (レス) id: b410464f01 (このIDを非表示/違反報告)
さらちゃん - 素晴らしい作品でした!1日で一気読みさせて貰いましたが最初から最後までキュンキュンさせていただきました(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年6月13日 13時) (レス) id: 498426d70a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緋毬 | 作成日時:2019年5月12日 23時

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