呼応 ページ37
ぱちり。
目を開けると、最近見知った天井だった。
(医療棟…？)
はっきりしない頭で何故ここに居るのか思い返そうとして、再度目を閉じる。
ふわふわした記憶を手繰り寄せて、ようやく拉致されていた事を思い出して脳の芯が冷えた。
(そ、うか…助かったんだ…)
経緯はまるで分からないが自分がここに居るという事は誰かが駆け付けてくれたのだろう。
そこに思い至って再び目を開けると、視界の端で何か赤いものが動いた気がして視線をそちらへとやった。
「え！？団長！？」
「目が覚めたか。」
驚きのあまりガバッと起き上がれば、ぐるりと視界が回るように揺れて体勢が保てずに勢い良くベッドに再び倒れ込みそうになる。
それをすかさず団長の腕に支えられ、頭がグラグラするような感覚のまま礼を言う。
「急に起き上がるな、もう暫くは横になっていた方がいい。」
「あの、またしてもご迷惑をお掛けしてしまい…。」
不甲斐なさに顔を伏せてそう言えば、優しく温かい手が頭に降ってきた。
ねぎらうようにゆっくりと撫でられれば鼻の奥がツンとして目頭が熱くなる。
「あの状況でよく耐えた。敵も捕らえられAも生きて戻ってこれたのは充分な成果だ。」
「団長…。」
「傷自体は癒えたが疲れもあるだろう、大事を取ってしばらくはここに居るようにとの事だ。」
「はい。」
確かに怪我は全て治療が施されているものの、体には僅かに痺れが残っている。
自分の手を閉じたり開いたりしながらそれを確認しつつ頷く。
(助けてくれたの、団長なんだ…)
気を失う前に見た銀色は勘違いだったのだろう。
(それか、私の願望が見せた幻か何かだったのかな…もう未練がましすぎるわ)
いっそ頭を抱えたくなる。
想いを自覚してからそれを封じようにも、ふとした瞬間に突きつけられてしまうのだ。
(自己嫌悪で頭が痛い)
団長は私が目覚めたのを確認して団へと帰っていったので今は部屋に1人。
ゆっくり身を起こして膝を抱える。
体を縮め、またこの想いに蓋をするように。
(寝てしまおう…)
縮こまったままベッドに転がる。
目を閉じれば視界と同じく思考も闇へと落ちていく。
「ノゼルさん…。」
呟くようにその名を口にすれば未だに気持ちが引きずられる。
それを閉じ込めるよう膝を抱えた腕に、より力がこもる。
…目を閉じて耳も心も閉じるようにしていたから気付かなかったんだ、人の気配に。
「…何だ。」
私の呟きに応える声がある事を。
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夏冬 - ほんっっっっっとに面白かったです！！そして幸せな気分になれました！！！こんなにいい小説は久しぶりです！！！本当にこの作品を作ってくださってありがとうございました！！！！感謝しかないです！！！ (6月16日 21時) (
レス) @page50 id: 770d92d812 (このIDを非表示/違反報告)
雑草のかきあげ（仮垢）(プロフ) - あ''ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ好きです！！！！！きゅんきゅんが止まりません！！！！！作者様は私をキュン死させようとしているのでしょうか！？！？！？ (2022年9月6日 7時) (レス) @page50 id: dc942b8391 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 読み応えがあり泣き笑い、本当に面白かったです！！！ (2021年5月9日 6時) (レス) id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 一気に読ませていただきました。表現が細かいのにしつこさが無く、素人特有のわざとらしさも感じられなくてプロなんじゃないかと感じるほどの内容と読みやすさでした。続編、もしくは新作楽しみにしております。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年7月8日 15時) (レス) id: b410464f01 (このIDを非表示/違反報告)
さらちゃん - 素晴らしい作品でした！1日で一気読みさせて貰いましたが最初から最後までキュンキュンさせていただきました(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年6月13日 13時) (レス) id: 498426d70a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緋毬 | 作成日時：2019年5月12日 23時
