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通信機をしまい、再び彼女を腕に抱く。
Aだけさっさと連れ帰りたくはあるが、賊が目覚めて何かしらの手段で逃げ出さないとも限らない。

近い空間に身を置かせることも(いと)わしいが、今はこれが最善だろう。
2人を運ぶ事も考えたがこれ以上近付ける事も(はばか)られた。


(…冷えるな)


外は陽が暮れ始めたのかもしれない。
ただでさえ気温の低い洞窟内部は、一層冷え込む。
意識がなければ余計冷えるだろうと頬に触れれば、やはりひんやりとした温度が伝わってきた。

他の団員が来るのに然程(さほど)時間は掛からないだろう。
だがこの場を知る者は今、ここに存在しない。


「A。」


己の体温を分け与えるように今よりほんの少し身を寄せる。
彼女から伝わる微かな熱が改めてその無事を知らせた。

胸の内に閉じ込めようと決めた感情が騒がしい。
その甘い疼きは今は毒にしかならないというのに。


「ノゼル。」


掛けられた声は洞窟内に静かに響く。
街でちらりとその姿を確認してはいたが、こちらの情報にも網を張っていたのだろう。
声の主は一瞬にして事態を把握して慌てる事もなく側まで来る。


「Aは無事なんだな?」

「気絶しているだけのようだ、心配あるまい。」

「また魔導具か…。しかしよく国内に潜伏しているのを突き止めたな、本部でも未だに手こずっているというのに。」

「…偶然だ。」

「偶然、か。」


探るような視線を無視してAを渡そうと近付けば、何故か受け取ろうとはしない。
抗議の意味も込めて睨めば、返ってきたのはいつになく真剣な眼差しだった。


「…おまえの考えは理解しているつもりだ。その上で言うが、本気で手放すというなら私が貰う。」


こちらを射抜く瞳が語るのは、本気。
喉の奥で詰まるものを抑え込んで一層睨みつける。


「王族から引き離した所で、彼女は騎士団員だ。必ず危険は付きまとう。AがAである以上はどうにもならん。」

「……。」

「Aの想いを無視してまで(つらぬ)く事では無いと思うがな。泣いて(すが)るほど想われているというのに…。」

「なんだと?」


泣き縋った?誰が、誰に。
その問いの答えは出ている。
胸をジリジリと黒いものが焦がした。


「そんな目をする程に想っているのなら突き放さずに手元に置けばいいだろう。…そうは待たんからな。」


そう言って今度こそAの身はその手に渡る。
残されたのは胸を焦がす黒い(もや)

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夏冬 - ほんっっっっっとに面白かったです!!そして幸せな気分になれました!!!こんなにいい小説は久しぶりです!!!本当にこの作品を作ってくださってありがとうございました!!!!感謝しかないです!!! (6月16日 21時) (レス) @page50 id: 770d92d812 (このIDを非表示/違反報告)
雑草のかきあげ(仮垢)(プロフ) - あ''ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ好きです!!!!!きゅんきゅんが止まりません!!!!!作者様は私をキュン死させようとしているのでしょうか!?!?!? (2022年9月6日 7時) (レス) @page50 id: dc942b8391 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 読み応えがあり泣き笑い、本当に面白かったです!!! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 一気に読ませていただきました。表現が細かいのにしつこさが無く、素人特有のわざとらしさも感じられなくてプロなんじゃないかと感じるほどの内容と読みやすさでした。続編、もしくは新作楽しみにしております。素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年7月8日 15時) (レス) id: b410464f01 (このIDを非表示/違反報告)
さらちゃん - 素晴らしい作品でした!1日で一気読みさせて貰いましたが最初から最後までキュンキュンさせていただきました(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年6月13日 13時) (レス) id: 498426d70a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緋毬 | 作成日時:2019年5月12日 23時

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