不本意結婚物語5【ブラクロ】

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「ふぅ。」


湯上がりの体をベッドへ横たえる。
体を動かしていると気が晴れるのに加えて毎日任務と鍛錬で疲れ果て、睡眠不足はすっかり解消されていた。

程よい疲労感は眠気を呼び、朝はスッキリと目覚める。
朝に課されたメニューをこなして日中は任務をこなし、時間があれば魔力をより洗練した扱いが出来るように鍛錬する。


(前やってたのよりハードなだけあって、体力も筋力も少し付いてきたかな…)


時折ふらりと現れるメレオレオナ様にしごいてもらって、体中すっかりボロボロだ。
代わりに心も鍛えられたのか思い悩む事はあまり無くなった。

だからこそ、今日遂に来たネブラさんからの知らせにも落ち着いて対応できたのだ。


(明日、か…)


明日私はまたシルヴァ邸へ足を踏み入れる。
ネブラさんの事だから、そこでノゼルさんと偶然を装った形で会うのだろう。

冷たい目に突き放された後、一方的な婚約破棄の知らせ以外は一切連絡が無かった。
緊張はするが、その真意を知ってしまった今は恐怖心などまるで無い。


(ノゼルさん…)


撤回。
全く恐怖心が無い訳ではなく、会う事で面倒な女だと本格的に嫌われてしまう心配はある。
好きな人から拒絶される事に慣れるはずも無く。

しかしそれ以上に会いたい想いは募るのだ。
もう終わったはずの話に、チャンスをくれたネブラさん。
私一人ではきっと会う事は叶わなかっただろう。


(明日で、最後)


大丈夫、私にはちゃんと居場所がある。
何があっても最後はここに戻ってこられる。
元々この紅蓮の獅子王団に、国に全てを捧げる身。
以前と何も変わらぬ日常が戻るだけだ。


(そう、少し前までは心の底から欲していた日常だ)


叔母さんの言うとおり、世間が少し騒いで終わり。
私も同じ。
少し泣いて、前を向いて、変わらず歩む。
そうでなければならない。


(そして強くなって、ノゼルさんを安心させたい)


私なら大丈夫だと。
風の便りにでも知ってもらえたらそれでいい。
優しすぎる心配性のノゼルさんの憂いを1つでも減らせるよう、私はしっかり前を向く。


(明日、全部けじめをつけなくちゃ)


謝って、お礼を言って、お別れも。
ノゼルさんが望むなら、思うままに。
突き放すのがあの人の愛ならば、受け入れるのが私の愛だと示そう。


(ネブラさんには、申し訳ないけれど)


互いを想い合っての別れもあるのだと。
そういう愛もあるのだと。
納得してもらうより他はない。

明日はきっと、終わりの日。

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