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戀。
いとしい、いとしい と言う心。
それも恋なんだと知る。
「それをお兄様には伝えたの?」
「伝えた…ような…伝わってないような…。」
あの日、口にした思いはノゼルさんに届いていたのだろうか。
それを確かめる術はもう無い。
「なら、せめて言いたい事を全部伝えてからでも遅くはないんじゃないかしら。私としてはそのままお兄様が心変わりしてくれたら嬉しいけれど。」
「で、でも…もう私は婚約破棄されててとても近くに行ける状況にはならないと思います…。」
そう、あの手紙は私にとって絶縁宣言にも近い。
だが一方的な手紙だけで終わってしまうのも気が晴れない要因の一つでもあったのだ。
「あら。お兄様との間柄がどうあろうと私はあなたを気に入っているのよ。それとも私とももう縁が切れてしまうと思ってるの?」
「え…?」
ふふ、と面白そうにネブラさんが笑う。
気を許して貰えてるとは薄々思っていたが、それはノゼルさんの婚約者として及第点だったおかげだと思っていた。
まさか個人としてネブラさんに気にしてもらえてるとは思っていなかったので間抜けな声が出る。
「それにまだ世間ではあなたはお兄様の婚約者よ。うちに来るのに何か不都合あるかしら?」
「うち…え!?」
衝撃発言。
まさか、この状況でシルヴァ家に招かれるというのだろうか。
この複雑な思いを抱えてノゼルさんと対面する。
そんな事が出来るのだろうか。
「このまま流されて縁遠くなるのは私が嫌なの。悪いけれど、断らないでちょうだいね。」
「ほ、本気ですか…。」
「あなたも、どう転ぶにしても全部吐き出した方がスッキリするでしょう?」
それは、確かにそうだろう。
言いたい事もない訳では無い。
伝えたい気持ちも抱えている。
ノゼルさんの想いを知った今、苦しい程に募る想いと深い感謝。
伝えられるならば伝えたい。
「すぐとは言わないわ。今はお兄様も忙しそうだからまた後日…そうね、それほど待つ時間は無いから次の休みにしましょう。」
暗に、それまでに気持ちを整えろという事を告げられてぐるぐると頭が回る。
会いたい。会いたくない。
伝えたい想いと伝える恐怖心。
自分がどうしたいのか迷子になってしまいそうだ。
「大丈夫よ。」
暖かい手が、震えそうになっていた私の手を包む。
そこからじんわりと優しさが広がった。
うん、チャレンジしてみよう。
どうにもならなくても、せめて感謝とお別れを。
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夏冬 - ほんっっっっっとに面白かったです!!そして幸せな気分になれました!!!こんなにいい小説は久しぶりです!!!本当にこの作品を作ってくださってありがとうございました!!!!感謝しかないです!!! (6月16日 21時) (レス) @page50 id: 770d92d812 (このIDを非表示/違反報告)
雑草のかきあげ(仮垢)(プロフ) - あ''ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ好きです!!!!!きゅんきゅんが止まりません!!!!!作者様は私をキュン死させようとしているのでしょうか!?!?!? (2022年9月6日 7時) (レス) @page50 id: dc942b8391 (このIDを非表示/違反報告)
とも - 読み応えがあり泣き笑い、本当に面白かったです!!! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
さつき(プロフ) - 一気に読ませていただきました。表現が細かいのにしつこさが無く、素人特有のわざとらしさも感じられなくてプロなんじゃないかと感じるほどの内容と読みやすさでした。続編、もしくは新作楽しみにしております。素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年7月8日 15時) (レス) id: b410464f01 (このIDを非表示/違反報告)
さらちゃん - 素晴らしい作品でした!1日で一気読みさせて貰いましたが最初から最後までキュンキュンさせていただきました(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年6月13日 13時) (レス) id: 498426d70a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋毬 | 作成日時:2019年5月12日 23時