・ ページ26
「え！？」
綺麗な顔が目の前にある。
距離が近い。
直視できない。
頭が回らない。
心臓がやかましい。
…顔が熱い。
(そんな顔ってどんな顔！？変な顔してた！？)
脳内はぐるぐるとそんな事が回っている。
身じろぎすら許されないような気がして、視線を
「ノ、ノゼルさん…？」
「…何だ。」
「いや、何だじゃなく…。」
私がそわそわしているのが伝わったのか、手を離してくれる。
そっと距離を取ると、ノゼルさんは私からまた視線を逸らした。
うっとおしそうに前髪を掻き上げ、今度は私に苦言を呈す。
「邸内とはいえ女があまり夜にフラフラするものではない。」
「はい…。」
「…ついて来い。」
そう言って歩き出す先はノゼルさんが来た道。
私が来た道。
つまり、部屋まで送って貰えるのだろう。
「ありがとうございます。」
「…よく、頑張っているようだな。」
「え！？」
横目で私を見ていたノゼルさんがそう言う。
言われて気付く。
あれだけ苦労した歩き方が、今とても自然に出来ていた。
「あ、ありがとうございます！ネブラさんの教え方が良いので何とかなりそうです！」
「そうか。」
歩くことに集中していたせいで気付かなかったが、どうやらそれほど距離自体は無かったようだ。
あっさりと部屋まで着く。
「ありがとうございました。」
「明日もある、今日はもう休め。」
「はい！」
すぐに去るかと思っていたノゼルさんは、暫しその場で立ち止まる。
まだ何か、と問おうと思ったタイミングでその口が開かれた。
「…夜会の後…。」
「？」
「どこか行きたい場所が無いか、考えておくといい。」
「え？」
「私も仕事の片を付けておく。」
夜会の後。
私が正式にノゼルさんの婚約者となった後。
それはつまり…。
「デートのお誘いだと思っても…？」
「…好きにしろ。」
「か、考えておきます！」
ふん、と満足そうに、ノゼルさんは去っていった。
残された私はといえば、その場に
(なんでだろう、すごく、嬉しい)
あれだけ会うことに緊張してたノゼルさんだが、今は違う。
ようやく自然と接することが出来るようになったのだと嬉しくなる。
ベッドに入り、今日も一日色々あったと思い返す。
夜会まであと2日と少し。
明日への意欲を更に高め、眠りについた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緋毬(プロフ) - メリアさん» 普段は隙が無さ過ぎて見れなさそうですもんね！興味深すぎます（笑 (2019年4月19日 23時) (
レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
メリア - 前髪解いたらどんなノゼル兄様になるのか見てみたいですね！ (2019年4月19日 23時) (レス) id: edc4abbf43 (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - モンキッキーさん» いつもありがとうございます♪私もドキドキしながら作ってるので、これからも一緒にドキドキしてください(´∀｀*) (2019年4月14日 23時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
モンキッキー(プロフ) - とても面白いです！読むたびにドキドキさせられます！これからも更新楽しみにしてます、頑張ってください！ (2019年4月14日 23時) (レス) id: c0ef88c023 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緋毬 | 作成日時：2019年4月14日 22時
