ライバル ページ48
食後少しの間2人と歓談していたが、どうにも瞼が重くなってきた。
「眠そうだな、A。部屋まで送ろう。」
「兄上!俺が行きます!」
「おまえは今から用があると言っていただろう?構わず行け、いつまでも待たせるものではない。」
他の団員と鍛錬する約束でもしていたのか、団長はそう促してレオを送り出した。
同時に腰を上げ、移動しようと歩みだす。
…つもりだった。
ーーひょい
「えっ!?」
「掴まれ、落ちぬようにな。」
まぁ落としはせんが、なんて言いながらAを抱え上げて歩き出す。
これは、あれだ。
また聞く耳持たないモードな気がする。
「団長、ちゃんと歩けますよ!大分マシになりました。」
「甘えておけと言っただろう?ノゼルにばかりいい顔をさせるのは、少し癪だしな。」
ハハハと笑うその顔に、これは抵抗するだけ無駄だと感じて身を任す。
しかし改めて見れば、高い。
その高さに思わず力を入れて抱き着き、Aは固く目を閉じた。
「……。」
自分の腕の中でギュッと身を固くして大人しくするAに妙な心地を覚えながら、フエゴレオンはAの部屋まで歩みを進めた。
「まだあちらの部屋が片付いていなくてな。一晩ここで過ごしてもらうことになるが…。何かあれば呼ぶといい。ゆっくり眠るのだぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
目を閉じていたせいか、さっきよりも眠気が増したAは素直に頷いてベッドに身を預ける。
その様子を見届けて部屋を出るフエゴレオン。
(………不味いな…)
廊下でひとり額に手を当て溜め息を吐く。
腕に、首に残る感触と温もり。
己の中の繊細な感情部分がすこぶる刺激される。
(渡したくないと…)
思った。
思ってしまった。
先程のノゼルを目の当たりにした時は、その変化を心から嬉しく思ったはずなのに。
最終的にAが選ぶのであれば、あの昔から不器用なライバルになら任せられると思った。
それなのに、間を置かずして自分の感情に揺れている。
この歳になって、このような感情に振り回される事になるとは、思ってもみなかった。
(なぁ、ノゼル)
おまえも似た思いで居るのだろうな。
いや、まだ自覚はしてないようではあったが。
こんな事でも競い合う事になるとは、つくづくそうなる宿命らしい。
だが…。
幸い今の所、手元に置いている自分の方が歩があるはず。
Aを銀翼にはやるまい。
決意新たに仕事に取り組むフエゴレオンであった。
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緋毬(プロフ) - まゆさん» 感想ありがとうございます!今の所いい勝負なのでまだどっちに転ぶかわかりませんね…(笑)私も書いてて楽しいです(*´艸`*) (2019年4月7日 17時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - はじめまして!私はフエゴレオン様が大好きなので、ぜひそっちとまとまって欲しいです。あぁ……でも嫉妬するフエゴレオン様も見てみたい……(///∇///)ゞ (2019年4月7日 14時) (レス) id: 8902c85bfe (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - ありがとうございますヾ(*´∇`*)ノ頑張ります! (2019年4月4日 17時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
ジャンプ - 面白かったよ (2019年4月4日 16時) (レス) id: ea5f79410c (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - ありがとうございます、今の所いい具合に進められているので、頑張って走ります(*`・ω・)ゞ (2019年4月4日 9時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋毬 | 作成日時:2019年3月31日 23時