episode103 ページ10
黒川と複数の部下が頓所内にずけずけと入ってくる。その後ろからは、隊士達も何事だと言わんばかりの顔をして着いてきている。
いや、止めろよ。組織としては部外者だろ。どれだけ甘ちゃんなんだ。そんなんだから利用されるんだ。
近「黒川様!?いったい何事で?」
黒「あぁ、そろそろもう良いんじゃないかと思ってね」
そう言って黒川は不気味に笑いながら合図をする。すると、部下達は刀を構えた。それに土方達も反射的に刀を構える。
黒「彼らは私の有能なる部下達だ。新選組が警戒をする必要は無い」
近「お言葉ですが、ここには新選組の隊員以外はいないと思いますけど」
総「そんな物騒な奴らを引き連れて、何をするって言うんで?」
黒「紛れ込んだ紛い物は消さないと。この江戸に平和は来ないからね。なぁに、懐かしい人だよ」
土「懐かしい?」
土方が眉を寄せた。新選組とって懐かしい人物になんて居るわけ無いからだ。
黒「君達もよく知っている人物さ。わからないかい?影って名前なんだけども」
近「そりゃ、覚えてますけど……」
土「とうの昔に終わった話のはずでは?」
黒「確かに終わったよ。けど、生き残りが居たら?」
誰もが言葉を詰まらせた。一年半以上何の音沙汰もなく情報もそれらしい動きも全く無い。完璧に任務はこなしたと誰も疑っていない。
黒「あの場には、一人居なかった人物が居るんだ。その人は今も生きてる。見事に隠した牙で今も我々を亡き者にしようとしている。そうでしょ?最後の影さん」
そう言いながら黒川はこちらを見ている。それにつられるように全員の視線が私へと向く。
あ「私を見られても」
黒「もう隠す必要なんて無い。君があの残虐非道の一族ということは調べがついてる」
調べるも何も、お前も私達を利用した人間だろ。
ここで私が声をあげても、もう誰にも届くことは無いだろう。それも計算に入れて奴はここにいる。相変わらず、どこまでも悪知恵の働くヤツだ。
近「待って下さい黒川様!Aちゃんがあの影だなんてありえねぇ!」
土「証拠はあるのか?」
黒「君達がそう言うのは分かる。けど、私が調べたんだ。前の時も君達は私の情報を頼りに影を葬りさった。今もそれは変わらない。違うかい?」
近「しかしッ!」
黒「では、君達は江戸を守護するもので在りながら、残虐非道の彼女を見逃すと?」
近「もしそうなら、俺達は殺されててもおかしくない。けど、現に今こうしているんだ。何かの間違いだ!」
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作者名:暇人の甘党 | 作成日時:2016年5月14日 0時