マヨラー補佐の最後 (ページ26)

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episode１１９ページ26

新選組の追跡を逃れてから数時間。

影の屋敷で訪れるであろう人物を私は一人、待ち続けた。

高く登っていた太陽はいつの間にか傾き、空を赤く染めている。

その色は真っ赤な血に似ている。まるで、これから起こる事を予感しているようだ。

ここは、昔は穏やかで心地よい風が吹く良いところだった。よく小鳥などの動物が近くまで来ていたが、今は姿どころか気配もない。屋敷に血生臭い臭いがこびり付いてるんだろうな。

美しかった面影が失われたこの屋敷は、今はただ復讐を遂げる為の最後の砦。

威厳を放っていた長の部屋は、奴らから見たらボス部屋と言ったところか。

窓の襖を開けて、そこにそっと座る。

この部屋は会議室も兼ねていた為、６０畳は軽くある広さだ。天井も高く、広々としている。

一人で見渡すこの景色は、無駄に広く感じると同時に、それが酷く寂しかった。

でも、もう少しでそんな事を感じなくても良くなる。

全てをかけた、最後の大勝負が始まる。

荒れる心とは裏腹に、風は優しく体を撫でていき髪をなびかせる。ここから見られる景色もこれで見納めだ。

門の方からは車のドアを閉める音が聞こえる。次に足音、襖を開けていく音。そして……聞き慣れた声。

土「もう逃げれねぇぞ。手間かけさせやがって」

……バカ。来るのが早すぎるんだよ。奴より先に来たら、お前らを撒いた意味が無いだろうが！

なんて言えるわけもなく、心の中だけに留めておく。

後ろは振り向かない。私はただ、夕日を見つめて憎まれ口を叩くしかもうできない。

あ「あらら、意外と早かったか。さまよって遭難すると思ってたけど。あわよくばそのまま消えてくれると嬉しかったなぁ」

近「俺達は約束は守った。話してくれるな？」

あ「そうだね……考えるとは言ったけど、話すとは言ってない」

今更、言葉を交わしたところで何も変わらない。私達は、消すか消されるか。その道しか残っていないんだ。

総「往生際が悪いですぜ、A。ここで話さないってんなら、無理にでも連れて帰って今までのこと洗いざらい吐いてもらうぜ。あの黒川との事もな」

あ「やれるもんならやってみな。お前らお得意の力づくでな」

土「これ以上時間はかけてられねぇ。早いとこ……」

そこで土方の声は止まった。どうやら気づいたようだ。

あ「奴のお出ましだ」

最後に話せてよかったよ、土方。