episode108 ページ15
何とも滑稽な話だ。
私はただ一人笑みを浮かべる。
すると殺意が私のもとへと迫ってくる。
あぁ、やっぱり来たね。
───ガキン!!
刃がぶつかり合う。押し潰さんとするその力は私の刀を封じ込める。
土「テメェ、ふざけんなよ」
近「トシ止めろ!」
土方は珍しく近藤の声に聞く耳を持たない。それどころか、押し込もうとする力が一層増すばかりだ。
土「今まで世話になっておいて随分と勝手な言い草だな」
あ「そんな覚えないけど?」
あまりの力に私の刃にヒビが走る。
土「士道に背く者の末路は知っているんだろうな?」
あ「お前らが士道を口にするか」
言い終わると同時に刀は真っ二つに折れ、私の首には刀が当てられた。
土「せめてもの情けだ。言い残したことがあれば聞いてやる」
あ「刀を折ったくらいで勝った気になるなんて、相変わらず甘い」
土「ッ!」
袖に仕込んでおいたクナイを取り出し、土方の顔面をめがけて投げる。
咄嗟の事だが流石の瞬発力で防がれた。が、当てることが目的じゃない。隙きをみつけ後ろへ蹴り飛ばす。
土「チッ!小賢しいことしやがって」
神「もう止めるネ!」
新「そうですよ!お二人が争っても何も変わらない!本当の敵は、黒川って人じゃないんですか!?」
それでも土方は睨み続け、私は口だけ笑い殺気を出していた。
銀「刀を収めろ。そんなんじゃ何も変らねぇだろ」
あ「隙なんか見せたら鬼に斬り殺される」
土「テメェッ」
近「万事屋の言うとおりだ!これ以上、身内で殺りあうことは許さん」
土「コイツは俺らの敵だぞ!」
近「局長命令だ!!」
局長命令には抗えない土方は悔しそうに刀をしまう。生憎と私に命令を聴く義理はないが、使えなくなった刀を持ち続ける必要はない。
そしてこの場にいる必要も、もう無い。
近「待て!奴に嵌められたにせよ、過去はどうあれ今まで江戸を一緒に守ってきたじゃねぇか。武士としての道を捨てるのか?」
あ「そうさせたのはお前らだ。だいたい、武士といえども一歩間違えればただの殺人鬼だ」
近「それは否定しねぇ。だからこそ武士道がある」
あ「そんなの心一つで全て変わる……お前らの目の前にいるのが、その武士道を捨てた者の末路だ」
近「もう戻れないのか?」
あ「目的を果たすまで、私は戻る気も死ぬ気もない。あんたも自分の命の心配をしろ。次はどちらかの首を落とすことになる」
痛む心を振り切るように背を向け、そのまま塀の向こうへと姿を消した。
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作者名:暇人の甘党 | 作成日時:2016年5月14日 0時