episode106 ページ13
あ「ッ!」
奴らを斬り捨てようと踏み出した足がそれ以上進むことが許されなかった。
あ「邪魔なんだけど」
私の首元には土方の刀が当てられていた。頭に血が昇っていたとはいえとんだ失態だ。
あ「どいて。斬り捨てるよ」
土「うるせぇ。それ以上動くんじゃねぇ。刃向かうってんならテメェだろうと容赦しねぇからな」
土方は睨みながらもその目は真っ直ぐ私を見据えていた。
近「全員やめてくれ!何かの間違いだ!」
黒「構うな!邪魔立てするなら斬り捨てよ!」
必死の呼びかけにも応じず、黒川の部下共は味方であるはずの土方が居るのもお構いなしだ。
近「トシ危ねぇ!!」
隊士達は駆け出し土方の救出へと向かう。
しかし……
────ズシャァァ!!
血が吹き出す音と呻き声がその場に響き、全員が目を見開き固まった。
襲いかかってきた部下達はAによって斬り倒され、身体から勢い良く血を噴きだしていた。
土「テメェ……いつの間に」
あんたが敵に気を取られている一瞬をついて突破するなんて朝飯前だよ。相変わらずの甘さだな、土方。
あ「邪魔だって言ったのが聞こえなかった?ここにいる私を、お前たちの知る私だと思わないことだ」
近「あのAちゃんが何の躊躇いもなく……」
近藤達はあのAが容赦なく敵を斬っていくことが未だに飲み込めずにいるようだ。
血飛沫は私の顔や着物を汚していく。
止まることのない刀。止めることができない怒り。僅に残った理性ももはや役には立たない。
あ「私のことより自分の心配をした方が良いんじゃない?」
土「あ?」
あ「分かってるだろ。アレにとって、あんたらもただの駒だ」
土方の攻撃をかわし次々に襲いかかってくるただ敵を斬り捨てた。斬って斬って斬って斬って……次第に黒川の焦った声が響き始め、余裕がなくなった奴の口調はどんどん荒いくなっていく。
黒「何をしている!早く殺るんだ!!」
あ「無駄な事だ」
目の前に現れる敵を一気に斬り倒せば、あっという間に黒川と右腕であろう人物の2人だけとなった。
黒「クッ。まさかこれほどとは……」
敵「ここは一端引きましょう」
黒「クッ……近藤ォ!次会うときは心を決めておけ。この女を誰が殺すかをな!」
黒川がそう言った後に部下が煙幕を地面に叩きつけた。
煙が引き視界が開けた時には既に2人ともいなかった。
嵐が去った屯所には、騒ぎが嘘のように静けさを取り戻した。
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作者名:暇人の甘党 | 作成日時:2016年5月14日 0時