【歌い手】都市伝説系歌い手６。【男性声優】

｛２６９｝side：そらる ページ28

死ぬかと思った。

祭り衣装に身を包んだAさんを目の前にした時、意識と視界と思考と聴覚と神経と呼吸が止まった気がした。いや、そんなレベルじゃない。

言うなれば、そう･･･世界が止まった。




そらる「(や、ば･･･。
なん･･･っだこれ･･･)」




心臓の鼓動が大きくなる。

冒頭でAさんが周囲を煽ってからと言うものの、俺は他のものには目もくれずにAさんに釘付けになっていた。
俺と同じ現象が起きてる歌い手と声優さんの数人はAさんが居る若連を追った。




眞弥『駅前にお集まりのみなさんこんにちわー！
新庄まつりで１番やかましい若連です！まあやかましくしてる張本人私なんですけど！
てな訳で盛り上がりが足りてないですねー、祭りですよ祭り！ライブと同じで、人に迷惑かけないで楽しく盛り上がったもん勝ちなんですよ！！』

「よく言った、木祢岸の嬢ちゃん！」

「いいぞいいぞ、もっとやれぇ！」

眞弥『酔っ払い上等！
でも悪酔いしないようにね加藤さんと山科さん！
そんじゃ、観覧してるみなさんも一緒に声出していきましょう！！』




眞弥さんの声が、より一層会場を盛り上げる。

篠笛から始まって、そこに手平鉦(てひらがね)と三味線が重なる。Aさんが、両手に握りしめた撥を振る。


その一挙手一投足が、格好いい。
ひとつ太鼓が叩かれるたびに重低音みたいになって身体の芯に響いてくる、野外ステージでライブしてるような錯覚。


気持ちが昂ったような笑顔を浮かべるAさん。

ああ、ヤバい。
これは、心臓に悪い。

つーか今更だけど、あと２ヶ月でAさんと同じ舞台に立てるのか･･･。一緒に歌うって訳じゃないけど、それでも嬉しい。



そうこうしてる内に、囃子が一区切りついてAさんがパタパタと手で顔をあおぐ。




眞弥「？」

A「･･･、･･･」




囃子が一区切りついて、犬派さんがネコさんに何かを喋ってる。
･･･なんだろ、ここからじゃ聞こえない。


すると俺の方を見たAさんが「！」と何かに気づいたのか、撥を撥掛けに置いてこっちに向かって来た。え･･･。




A「そらるー、それ何味？」

そらる「え。
･･･ブルーハワイと苺のミックスだけど･･･」

A「へー、意外と美味しそ。
ひと口貰うねー」




そう言って、Aさんは俺が持ってたトロピカルジュースに刺さってるストローに口をつけてひと口飲んだ。

( °_° )！？

｛２７０｝→←｛２６８｝

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す