＠ ページ6
A「は？
うちに住めばいいじゃん」
パタンパタンと読み漁っていた数冊の本を本棚の元の位置に戻しながら、Aは４匹に言った。
まるで当然のように返されたその言葉に、犬以外の３匹はぽかんとした。
「･･･え？
いや･･･えっ？」
A「部屋ならいくらでも増設できるし。そろそろ
「･･･い、やいやいや･･･お人好しすぎやろ･･･」
A「言葉を返すようだけど、君達がこの家の周りにある森を抜けて近くの街とかにたどり着けたとしても見世物にされるか人間界の生き証人だとかでとっ捕まえられるのがオチだよ」
「え」
A「魔界って言っても、君達みたいに魔法を使わないで人語を喋る動物は居ないの。
物好きな奴なら解剖とか魔界の動物を魔法無しで喋れるようにする薬を作る為に細胞とか血液を欲するかもね」
「か、解剖･･･！？」
A「可能性のハナシ。
みんながみんなそうじゃないけどね」
至って冷静に。Aは４匹と出会った時と同じく淡々と喋った。
「ここに住ませてもらおうや！
魔女さんもこう言ってるんやし、な？」
「坂田･･･。･･･はあ。
･･･そりゃ、住まわせてくれるんならありがたいけどよ。いつまで住むのかも解んねえんだぞ？」
「そうそう。
それに俺らにメリットあっても、魔女さんにはメリット無いやろ」
パタンと最後の１冊を戻し終えて、Aがリスの言葉にキョトンとした。
A「私にとってメリット･･･か。
･･･そうだな。別に君達を悪事に使ったり魔法の実験体にしようとは思ってないよ。
ただ･･･見ての通り、私は感情が欠落していてね」
「･･･言われてみれば。会った時から、ちっとも感情変えへんよねぇ」
A「実を言えば私は生まれつき親が居なくて。捨てられたとかじゃなくて。
母親や父親、家族と言う概念がよく解らないんだよね。だから、なんて言うか･･･心を教えて欲しいんだ」
「心･･･って言われてもなあ。
俺らと暮らして、解らんかったらどうなるん？」
A「そこらへんは人間の底力を信じるよ。
人間界の文献の一節に「化学や魔法で解明出来ないものが、人間がもつ心」って書いてあったし」
「なんだそりゃ･･･。
･･･もし心がなんなのか、解んなくても追い出すとかしないよな？」
A「しないよ」
はっきり断言したAに、４匹は顔を見合わせてお互いに頷いた。
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作者名：暇犬
| 作成日時：2018年5月29日 22時
