その手。4-第2章-

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「ヒョン、話したことあると思うけどAヌナだよ」
「初めまして。お会いできて嬉しいです。リョウクがいつもお世話になっております」


お辞儀しながら、イェソンさんに挨拶する。


「リョウク、この人はいつもこんなに難いのか？」


まさかの私はスルーでリョウクにそんなふうに尋ねるイェソンさん。

難い？
初対面の挨拶ってこんなもんじゃないの？

唖然とする私を見てリョウクが笑いながら、「ヒョン、初めて会う人にいきなり慣れ慣れしい人はいないよ」と代弁してくれた。


「そうか。初めまして、キムジョンウンです」


納得してくれたらしく、差し出された手を握り返す。
それをニコニコと見守るリョウク。


「噂には聞いていたけど、綺麗な人だな」
「ヒョン、好きになっちゃダメだからね！」
「リョウク！いきなり何言ってるの。そんなわけ」
「ダメか」


「リョウクの姉ならいいと思ったんだけどな」と二度見してしまうような発言を淡々とイェソンさんの口から出てくる。
え？と思ったのも束の間、リョウクが呼ばれる声が聞こえる。


「あ、ヌナ。ちょっと呼ばれてるから行くね！すぐ戻る！」
「え、ちょっと、リョウク」


待ってという前に去って行くリョウクの後ろ姿を見て、この状況をどうしろというんだと頭に駆け巡る。
イェソンさんに向き直ると、目が合う。


「え、っと、あの、イェソンさん。あ、ジョンウンさん」
「ん？」


そんな首傾げて見つめられたら、緊張してしまう。
なんだか無駄に色気を発する人だ。


「今日は楽しみにしてます。私、皆さんの歌ってる姿見るの初めてなので…」
「あー、そう言ってたな、リョウクが。全く見たことないんですか？」
「お恥ずかしいことに…」
「何が恥ずかしい？別に今日見れるからいいじゃないですか」
「えー、まぁ、そうですけど」


掴めない。
この人はかなり癖がある。
思ってた言葉とは全く違う返しが来るし、そういえばリョウクが変わってるって前に言ってたっけ。


「Aさんは、いくつですか？日本では女性にいきなり年齢を聞くのは失礼なことだとリョウクに聞いたけど」
「大丈夫です。ジョンウンさんと同じ歳になります」
「何月？」
「6月です」
「それならヌナか！」
「2ヶ月しか変わらないですよ？」
「ん？俺の誕生日を知ってるのか？」
「あ、同い年だと知って親近感がわきまして…」
「それならなんでさっきから難いんだ？」
「それは初対面ですし」
「リョウクの姉だろ？もう初対面の挨拶は終わったんだから気にするな」

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