壁越しの恋 ページ9
「……じゃあ貴女がミツル君の言ってたレイラちゃんなのね」
レイラが頷けば、渡されたコップに入ったお茶に小さな波が浮かぶ。
光を絞った懐中電灯の照らすトンネルには、
カンっカンっ、と
石に何かを打ち付ける音がしきりに響いていた。
「……本当に……一人で掘ってるんですか……」
「えぇ……」
先程の話を未だに信じられない彼女は、行き止まりとなっている岩壁を見つめる。
悲しげに微笑んだミチルは頷いてみせた。
ミチルがここに通うようになった理由はただ１つ。
岩壁を挟んだ隣に愛しい彼氏がいるからだ。
最初こそ重機、大勢の人とポケモンなどで掘り進めていたこのトンネル。
しかし、野性のポケモンに悪影響を与えることが分かった今は全てが無くなってしまった。
遠く離れたカナズミシティとシダケタウンを結ぶこのトンネルに期待を馳せていた者は大勢。
ミチルもその一人だった。
ミチルの彼氏はトンネルの工事に携わっており、二人が出会ったのもこれがきっかけだ。
遠く離れたミチルに会いたいと彼氏は一人、手作業でこのトンネルを掘っているのだが……
「私に会いたいのは取って付けた理由よ」
小さく呟かれた言葉に、レイラは首をかしげる。
「彼、優しいから……このトンネルが大勢の人の役に立つって分かってるのよね……」
慈愛と信頼の混じった口調に、レイラは思わず何もない地面へ目を向けた。
と、
「おぉ〜い、ミチルさ〜ん！」
「はい！」
岩に阻まれ、くぐもった声が響く。
スクリ、と立ち上がったミチルはすぐさま大きく返事をした。
どうやら声の主は例の彼氏のようだ。
「こっち側から掘り進めていたんだが……手作業では崩せないような岩が出てきたんだ」
焦りを含んだ声に、ミチルの目が見開かれる。
「わ、私に！私に何かできる事は無い！？」
岩壁に寄り、必死に声をあげるミチル。
と、
「これ……こっちからなら壊せる……」
懐中電灯で岩壁を照らしたレイラが小さく呟いた。
「本当か！？誰でもいいからこの壁を壊してくれ！！」
高揚したミチルの彼氏の声の勢いに、見えないはずが小さく頷くレイラ。
そして、近寄ってきたミチルが彼女に頭を下げた。
「私からもお願いします！どうか……この壁を取り払ってください！！」
分かった、と返したレイラは立ち上がる。
ミチルとその彼氏に岩壁から離れるように言った彼女は、パートナー全員を繰り出した。
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CrazyBook(プロフ) - コメントありがとうございます！本当に気長にお待ちください。 (2019年8月12日 9時) (
レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
菜々美 - この作品好きです！ゆっくりでいいので更新頑張ってください。 (2019年7月18日 16時) (レス) id: 179628e6fd (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - かしわさん» コメントありがとうございます！完結するまで更新し続けますので気長にお付き合いください！ (2019年3月24日 21時) (レス) id: 8c59f4ad06 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ - この作品好きです。更新頑張って下さい。 (2019年3月23日 1時) (レス) id: 356d08c55f (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - ルインさん» コメント、ありがとうございます！嬉しい限りです！これからも気長に読んでください！ (2018年7月19日 19時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：CrazyBook | 作成日時：2018年3月28日 22時
