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翌日。
約束通り、不死川さんは仕込みを手伝ってくれていた。
彼は思った以上に要領がよく手先が器用だったため、
当初予定していた時刻より前に終えることが出来た。
『ふう、これで明日、開店できそうだわ。
ありがとう不死川さん。』
「あァ、礼は明日のおはぎで手を打ってやるわァ」
にやり、と笑う姿にまた胸がチクチクと痛みだした。
あぁもうなんなの、と邪念を振り払おうと勢いよく振り返ったのがいけなかった。
ふらりと視界が揺れあぶねェ、という声と共にあの時と同じ、風のような爽やかな香りに包まれた。
彼の顔が目の前にきて見つめ合い数秒。
しん、とする空間に限界だァ、という声が響いた。
『あ、あの、不死川さん…、』
「…代わりでも何でもいい。俺が傍にいたら迷惑かァ?
……すまねェ。
俺は、お前に惚れちまってんだ。」
小さく、切なげに呟かれたが、
私の耳にはきちんと届いてしまった。
同時に、決して開けまいとする最後の扉を私の感情が壊しにかかる。
いけない、いけない。
これじゃあ、杏寿郎に顔向けができない。
理性で必死に食い止めるが、
代わりに涙が溢れ出てきてしまう。
それを見た不死川さんがギョッとしたような顔をし、
やがて“やってしまった”というものに変わった。
「すまねェ、急ぎすぎたァ……。」
謝りつつも離す気はないのか、
変わらず抱きしめられたままだ。
「ゆっくりでいい、ずっと待ってる。
だから、いずれは俺をその目に写してほしい。」
真剣な様子の彼に、ただ頷くことしか出来なかった。
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唯梨(プロフ) - 豆腐さん» はじめまして!そんなお言葉…嬉しいです😭😭書いてよかった…!ありがとうございます! (7月23日 22時) (レス) @page38 id: 52e22c892c (このIDを非表示/違反報告)
豆腐 - 初めて夢小説を読んで涙が出ました。こんなに泣くとは思わず自分でも驚いております。とても素敵なお話お話でした。ありがとうございました。 (7月15日 16時) (レス) id: 5618040869 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - わぁぁ…!読んでると自然と涙がでてくるあったかいお話……!心がほわぁっとするの…!(語彙力)そしてまってみいちゃん。煉獄さんと実弥さん書いてくれるの!ってことは少なくともあと2作みいちゃんの鬼滅が読めるってこと……?最高っ!!ありがとう!!大好きです。 (2021年7月22日 23時) (レス) id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - し、師範んんんん…!!!!やっぱり私何度読んでも、涙無くしてこのお話読めない……出てくる人皆温かい(ToT)本当に大好きなお話。リクエスト応えてくれて感謝しかない。そして、紹介までして貰っちゃって…びっくり!!ありがとう!! (2021年7月22日 22時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - ちょい悪な杏寿郎見たいです!唯梨さんの書く、実弥ハピエンも最強です!前回、実弥バッドエンドと言いながらも、コメントした時点で心折れました(ToT)チーン笑。 (2021年7月22日 21時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唯梨 | 作成日時:2021年7月22日 19時