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「そう…ですか」
「いや、ごめんなさい。凄く嬉しいんですけど、そんなに褒められたこと無かったので…今まで」
ゆらりと言葉を述べる相手。
俺が彼女をじっと見つめると、瞳に不安の色が浮かんでおり。
「私、引かれてないんだなって」
「逆に俺の事引いてません？」
「え、いや…引いてないですよ…」
図星だったのか、そう言えばしどろもどろした相手。
思わず鼻を鳴らした俺を見て、彼女も肩を揺らして緩く笑みを零した。
「うん、笑ってた方が似合う」
「そうですか？」
「はい。」
控えめながらも凛とした美しさを含んだ彼女の笑顔を、心から可愛らしいと思った。
心臓をきゅっと締め付けられる…久しぶりの感覚。
俺はこの感情が何なのか知っている。
「あの」
改まったように声をかけられ、抜けた返事を返す。
「はい？」
「ここで会えたのも何かの縁だと思うので良かったら名前、教えてください」
カメラのホルダーを握り締め、不安そうにこちらを上目に見つめる相手。
正直断る理由は無い。
彼女になら、自分の名前を言っても良いと思えた。
「米津。」
「米津玄師です」
「米津玄師…さん。素敵な名前です」
「米津って珍しい？」
「私は初めて聞きました」
恐らくだが、メディアとかあまり見ないのだろう。
嘘をついていないということは彼女の純粋な目が全て物語っている。
周りにはそういう人が少ないけども、こういう人の方が俺的には気楽で丁度いい。
「私はA、って言います」
「Aさん？」
「そうです」
「綺麗な名前。」
A、A…。
心の中で目の前の彼女の名前を繰り返せば心臓がどきどきと跳ねる。
ほんとに、良い歳して、ガキみたいな思考回路しか出来ないのが嫌になるけど。
Aさんのことがとても気になって仕方がない。
一目惚れ…とは言わないのかもしれないけどそれに近いような不思議な感覚。
「また…写真見せてください」
”また会いたい。”
「逆に、見てもらっていいんですか？」
「勿論。楽しみにしてます。」
「ありがとうございます」
嬉しそうに頬を綻ばせた彼女。
もっと、彼女のことを…Aの事を知りたい。
続く
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作者名：朝霞 | 作成日時：2022年10月13日 10時
