光の君(ymin)

そして3日目 ページ23

ym side

目が覚めたのは昼近く。
そりゃそうだ。あれだけやったら、へろへろ。
なのに、隣に恋人の姿はない。いたであろう所をそっと触れば、すっかり冷たいから、ずいぶん前からいないって分かった。

のそりと起き上がり、リビングに行けば楽しそうな歌が聞こえて来たから、にやけてしまう。
あんまりにも可愛いから、もうちょっと黙って見守る事にした。

伊「ちょっちょちょっと待て冬」

なぜに童謡？
と、思うけど、かなりの声量で歌いながらお米を磨いでる。
おしりをふりふりさせながらってのが可愛いポイント。

伊「あ〜きがね〜って、ちょっちょっちょっと待って」
山「ぶっ(笑)おはよ〜」

がまんできなくて、笑いながら声を掛ければ、見つかった！みたいな顔した慧が、なにやらごにょごにょ言ってる。

山「(笑)続けて続けて」
伊「べっ別に！」

ぷいってうしろを向いて、磨ぎ終わったお米を炊飯器にセットすると冷蔵庫から野菜を取り出した。
見れば、お鍋にお湯が沸かしてあるから、お味噌汁を作ろうとしてるのが分かる。

さらに油が入ったお鍋も準備してある。

伊「唐揚げは、山ちゃん担当だからね」
山「はーい」
伊「ん〜ん〜今から権限移譲！」
山「はあ？」

にこにこしながら、慧が俺の手を引っ張って、調理スペースに連れて行った。
まな板の上には玉ねぎと長ネギが乗ってる。

伊「玉ねぎとねぎのお味噌汁、お願い」
山「ぶはっ了解」
伊「あと、唐揚げね」
山「はいはい」

手を洗って、油が入った鍋が乗ったガスの火をつける。慧が冷蔵庫から下準備しておいた味がついてる鶏肉を取り出して渡して来た。なかなかの重量。

山「全部、食べられる？」
伊「2万個食べた男だぞ」
山「(笑)はいはい」

俺が作業する手元を見ながら、ぴったりくっついてるのが、可愛くて。

山「ちょっちょちょっと待て慧！」

慧の真似をして、歌えばぶうって顔して、こっちをにらむ。俺より背が高いはずなのに、上目遣いなるのはどんな技なのか教えて欲しい。

伊「もう！」
山「可愛かったんだもん」
伊「もんって言う山田が可愛いんだもん」
山「ぶっはは」

ふひひって笑って、棚から食器を出し始めた慧。
どれもこれもお揃いで、可愛い食器。

唐揚げには、キャベツの千切りと思って冷蔵庫を開けたら、すでに切ってあるキャベツがお皿に乗って入ってた。

山「すげ」
伊「ほあ？」

食に貪欲だからなのか、先回りはできた恋人なのか。
それは本当の慧なの？

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