insight(Hikaru.I)

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…



年度末の彼女は、気合いを入れてるらしくいつも髪をまとめてる。
今日も、そうだった。



「Aさん、お疲れさまです。」


「…っ、岩本くん？来てたの？」



パタパタと駆け寄って来てくれるその姿が愛しくて抱きしめそうになるのを抑える。



「専務に報告に来たんです。だてさんと飯食ってきたとこで。」


「そうなんだ。呼んでくれたら良かったのに。」



ねぇ。
無意識に俺のこと煽るのやめてくんない？
ホントに小悪魔だよこの人は。
ここんとこゆっくり会えてなくて寂しいのは俺だけ？



「岩本くん、コーヒー飲む時間ある？」


「あります。」



久しぶりの給湯室。
会社とは言えふたりきりになれたから、鞄の中からホワイトデーのお返しを取り出した。



「はい、これ。ホワイトデーでしょ、今日。」


「…っ、今日14日？忘れてた。ありがとう。」



うわぁ嬉しいって幸せそうに笑うから。つい俺も、口元がゆるんでしまう。

いちごのマカロン、気に入ってくれるかなって思って。忙しい中結構な混み具合のデパートに行って並んで買ってきたんだ。

つかの間の休憩が、日々の疲れを吹き飛ばしてくれる。



「土曜日、こっち来るよ俺。」


「ホント？」


「久しぶりにゆっくりしたい。」


「うん。じゃあ、照の好きなチョコ買っとくね。」

「まじで？」



やばい。まじでこの人には手のひらで転がされてると思う。


まぁ、いいか。
どう考えたって俺の方が惚れてるから。


そして。
決算が終わり。営業所の売上も順調で、俺はそろそろ本社に戻りたいですと専務に申し出た。

その時は、考えておくとしか言われなくてちょっとへこんだんだけど。
帰宅してメールをチェックすると、専務からのメールが届いてて。



"年内には、本社に異動してもらう予定です。”



結構あっさりとしたものだったけど。

年内ってことは、9ヶ月？
あと9ヶ月頑張れば、俺は本社に帰れる。


そしたら。


Aに、伝えよう。


ずっと、一緒にいてほしいって。

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