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…
ここに来ちゃ、だめだった?
愛しい人にそんな悲しいことを言わせてしまった。
俺の、ちっぽけなプライドのせいで。
「そんなことないよ、来てくれてホントに嬉しかった。ありがとう。」
「…ホント?」
「うん。」
抱きしめると顔が見えなくなるから。Aの頭を撫でて、髪をすいていく。
「昨日は会えないと思ってて。帰ってきたらAがいたから俺夢見てんのかなって思った。」
サンタさん、サプライズでプレゼントくれたんだなって。
本当に嬉しかったんだ。
「来てほしくないわけないじゃん。なにもやましいところなんてないし。ただ。」
「ただ、なぁに?」
見上げるときの癖だね。少しだけ首を傾げるの。
正直に話す俺を、受け入れて、くれる?
「不安にさせてしまってたならごめん。…Aに、この街に来て前の暮らしを思い出して欲しくなかっただけ。俺のつまらない嫉妬だよ。過去にやきもち妬いたってどうしようもないのに。欲張りだから、Aの今とこれからだけじゃなくて、過去も全部欲しい。」
「照、」
「こんな俺でも愛してくれる?」
高ぶる感情を抑えられない俺を、彼女はきつく抱きしめた。
「逃げてたのかな…。もしAが別れた旦那さんのことを思い出したとしても全部受け止めるから、来たいときにここに来て。」
隠すことで心が離れてしまうくらいなら、全部さらけ出してしまおう。
俺はAのことが大好きで大好きで仕方なくて。最後の方は涙声になってしまってた。
「泣き虫ね、照。」
「…っ、しょうがないよ好きなんだもん。」
ゆっくり体を離したAが指で涙を拭ってくれる。
「照に会いたかったの。自分でも分からないくらい会いたくなって。仕事終わって気がついたら電車に乗ってた。」
照のせいなんだからね?といたずらっぽく笑うと、Aは両手でそっと俺の頬を挟んでキスをした。
外は寒いけど。
うちの中は暖かい。
だって。君がいるから。
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みち(プロフ) - うみ♪さん» うみ♪さんコメントありがとうございます。以前も読んでくださってたんですね。不思議なめぐり合わせ、とても嬉しいです!また読んでやってくださいね。 (2021年1月31日 15時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
うみ♪ - こんばんは!初コメです!ケンティーメインのお話の時から好きで、ずっとまた作品見たいなあと思っていてひーくんメインのお話で覗いて見たら作者にみちさんのお名前が!!こんなことってある!?ってなりました!過去作も読ませてもらってます! (2021年1月31日 0時) (レス) id: ebee9b3126 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。このふたりには幸せになってほしいので。その後を書くことにしました。これからもよろしくお願いします。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 続編ありがとうございます。幸せな2人の今後の展開がとても楽しみです。更新ありがとうございます。 (2020年8月24日 22時) (レス) id: f071218485 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - おこりさん» コメントありがとうございます。更新なかなかできない時もあったのでお待たせしていたかもしれませんが、読んでいただいて嬉しいです!また番外編書くつもりなので、また読んでやってください! (2020年8月17日 12時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みち | 作成日時:2020年2月24日 21時