insight(Hikaru.I)

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…



「照の家族って、あったかいね。」

「そう？ありがと。」

「妹さんも弟さんも、優しくてかわいいね。照のこと大好きなんだなって思って。なんか、羨ましくなっちゃったな。」



助手席の彼女の横顔が、綺麗で儚くて。
このまま離れることなんてできないと、ハンドルを切った。



「ちょっと、降りてみない？」

「…うん。」



どこに来たんだろうって顔してるAは、ここ知らないんだな。
タイムスリップしたみたいな夜の街明かりを。その瞳にも映してみてほしくて。



「わ、こんな幻想的な景色初めて見た…。」

「お気に入りの場所だから、連れて来たいと思ってて。念願叶ったわ。」



後ろから抱きしめると、腕にそっとAの手が触れる。


Aは早くに父親を亡くしたから一人っ子で。女手ひとつで育ててくれるお母さんの姿を見てきたから、甘えるとかなかったって。ぽつぽつと話してくれた。


あぁ。
甘え下手で一人で頑張ってしまうのは、この子がたどり着いた生き方なんだな。だけど。



「これからは俺に甘えてよもっと。」

「…いいの？ものすごく甘えちゃうかもしれないよ？」

「俺にだけは甘えていいよ。」



我が儘だとは思うけど。つい、甘えん坊のAを誰にも見せたくなくて言ってしまう俺に、嬉しそうな笑顔を見せてくれる。



「…明日も、会える？」

「起きて着替えたら行くよ。」

「早いよ、私寝てるかもしれないじゃない。」

「じゃあ、起こしてあげる。」

「ふふ。」



愛って。
どこまでも増えていくんだな。

この子のこと、一生かけて幸せにしたい。もう抱えきれないよって言うくらいの愛で包んであげたい。


そう、思った。

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