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…
「悩みがあるとどうしてもミス出ちゃうよね。」
「ん。」
里子の隣にしゃがんで、ひとつため息。
結婚は、勢いでどんどん進んでいったのに。
離婚は、そう簡単には行かないもので。婚姻届という紙1枚で、縛られるものなんだと初めて知った。
「どうするの？離婚届郵送しても書いてもらえなかったらダメだしさぁ。」
「あ、うん、あのさ。」
今、課長がいないから、プライベートな話もしやすいけど。
宮舘くんいるし、と思ってチラッと見ると彼は凛とした表情のまま視線をこっちに向けた。
「あ、僕のことならお構いなく。集中すると周りの声が一切聞こえなくなりますから。」
すると、キャビネットにあった書類の山をデスクに置いて、ものすごい勢いでテンキーを叩き始めた。
「え。」
「そういうことらしいわ。」
彼なりの、気遣いなのか天然なのか分からないけど。宮舘くんって、かなりできる男。
口もかたいし、経理にいるのすごい納得だわ。
うちの会社そんなに大きくないのにいい人材確保してるな、なんて。妙に冷静にそんなこと考えたっけ。
「ただいま。」
誰もいない、部屋。
頭の中を整理しながら、実家の母に週末帰ると連絡して。
数ヶ月ぶりに、生まれ育った海辺の町に帰った。
電車を降りると、懐かしい潮の香りが鼻をくすぐる。
「ただいま。」
「おかえり、干物もらったのよ食べる？」
何事もなかったかのような、穏やかなお母さんの顔。
久しぶりに向かい合ってご飯を食べていると、お母さんが話を切り出した。
「幸聖くんとのことだけど。」
「うん。」
考え直せと言われるかと思っていた私にくれた答えは、とても意外な言葉だった。
「嘘つけばいいじゃない。」
「…嘘？」
「私子供できないみたいなんで、跡取りを儲けることはできません、さようなら。で、いいじゃないの。」
嘘も方便って言うでしょ？と笑ってる。
「…それで、お母さんはいいの？」
「何が？」
「私が、子供できない体だって誤解されても。」
「…A、相手の考え方を変えるっていうのは難しいことよ。そうこうしてるうちに時間は過ぎていく。もし誰かに聞かれたら、あれは嘘、そうでもしないと別れてくれなかったのよって言えばいいじゃない。」
あなたが幸せに生きられるなら、嘘だって許される、と。笑っていると思っていたその瞳からは涙がこぼれ落ちていた。
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みち(プロフ) - うみ♪さん» うみ♪さんコメントありがとうございます。以前も読んでくださってたんですね。不思議なめぐり合わせ、とても嬉しいです!また読んでやってくださいね。 (2021年1月31日 15時) (
レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
うみ♪ - こんばんは！初コメです！ケンティーメインのお話の時から好きで、ずっとまた作品見たいなあと思っていてひーくんメインのお話で覗いて見たら作者にみちさんのお名前が！！こんなことってある！？ってなりました！過去作も読ませてもらってます！ (2021年1月31日 0時) (レス) id: ebee9b3126 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。このふたりには幸せになってほしいので。その後を書くことにしました。これからもよろしくお願いします。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 続編ありがとうございます。幸せな2人の今後の展開がとても楽しみです。更新ありがとうございます。 (2020年8月24日 22時) (レス) id: f071218485 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - おこりさん» コメントありがとうございます。更新なかなかできない時もあったのでお待たせしていたかもしれませんが、読んでいただいて嬉しいです！また番外編書くつもりなので、また読んでやってください！ (2020年8月17日 12時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みち
| 作成日時：2020年2月24日 21時
