insight(Hikaru.I)

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…



それから。


離婚届を役所でもらってきて書くべきところを書いて。彼に、離婚してくださいとLINEをしたけど既読にはならなくて。

電話をかけても繋がることは、なかった。



「元気なさすぎですよAさん。」


「ん…。」


「ノベルティ大反響だったし、売上伸びてるのになんでそんな顔してるんですか。」


「色々、ありすぎて…。」


「それはわかってますけど。もうちょっとしっかりしてもらわないと困ります。」



形勢逆転。
離婚できずに悩んでいることを話して以来、美南ちゃんに助けてもらってばかりの日々だ。



「岩本さん、最近ちょっと余裕できてきたみたいですね。」

「…へぇ、そうなんだ。」

「立ち上げ大変だったと思いますけど、さすがですよね。私ももっと頑張ります。」


美南ちゃんは、真っ直ぐだ。

その真っ直ぐさが、羨ましい。



「冬の限定商品どうしますか？そろそろテーマ決めないと。」

「冬ねぇ…去年は大切な人との時間だったけど。今年、どうしよう。私情はさんじゃいそう。」

「ありはありですけどね。」



担当者のプライベートも、まぁ案のひとつになったりする。

今年は、さて。どうしようかな。



「頑張った自分にプレゼント？」

「あーありがちなやつ来ましたね。」

「厳しいな、でもさ、自分に何かしてあげる日くらいあっても良くない？」

「まぁ…確かに、ボーナスも出ることだし年に一度くらい自分にご褒美もいいですよね。」



美南ちゃんが企画書を作り始めたから、私は駐車場代の精算をしに経理に行くことにした。



「お疲れさまです、これ、お願いします。」

「はい。確認させていただきます。」



猛暑だというのに宮舘くんはいつも涼しげだな。
世が世なら、お殿様みたいな？


なんて考えてると、書類を確認してる宮舘くんの眉がぴくりと動いた。



「あ、これ合計金額違ってます。」

「え、あっごめん。」

「いえ、ここ訂正印押して書き直していただければ。珍しいですね、Aさん。やはりお疲れなのでは？」



なんか最近、小さなミスが増えてる。



「…忙しい時期は終わったんだけどね。」

「乗り越えたあとに疲れは出ますからね。」

「…大丈夫だと思ってたんだけどなぁ」



気を引き締めなきゃいけないって、分かってるのに。
見えない前の壁が邪魔をする。

金額を訂正して差し出すと、宮舘くんは受け付けましたと優しく微笑んだ。

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