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…
この車の助手席に乗るのは二度目だった。
好き、と口にした彼はもう気持ちを隠す様子もなく。
「こんな遅い時間に、好きな人を一人で帰すわけないでしょ。」
と、マンションまで送ってくれている。
穏やかな曲が流れる車内は、色んなことが嘘みたいに思えるくらい不思議な空間だ。
何も前に進めていない私の全てを認めてくれる人と一緒にいるのは、なんて安らぐんだろう。
その時。
岩本くんが、長い信号待ちの時に突然手を繋いできて、いたずらっ子のように笑う。
普段大人びている彼の、年下の一面が垣間見える瞬間、だけど。
「あの、岩本くんこれ、」
「あぁ、手を繋ぎたかったからです。」
「あのね、こういうのは」
「はい、ダメですよね。」
素直に手を離すと、その手はハンドルに帰っていった。
「俺、待ちます。Aさんのこと。」
「…岩本くん。」
次の瞬間後ろの車からクラクションが響く。
「やべ、青になってた。」
「安全運転でお願いします。」
「すみません。」
待つ、って。
それは。
私が離婚して独り身になるのを待つということ、だよね。
「岩本くんなら、もっと他に…いい子が見つかると思うけど…。」
私の言葉に彼は何も答えなくて。不機嫌そうに口を結んだまま車を走らせた。
ほどなくして車はマンションの前についた。
「ありがとう、岩本くん気をつけて帰ってね。」
「Aさん、」
「ん？」
車を降りようとドア側に体を向けていたから、顔だけ振り返ると。
何かを伝えようとしてる、瞳。
声にしなくても、彼の切ない思いが伝わってくるようだった。
「俺、ずっと前から好きだったんです。でもその気持ちに気がついた時にはもうAさん結婚するって決まってて。好きな人が幸せならそれでいいって、諦めて新しい恋もしたけど。一緒に仕事するようになって、やっぱりAさんがいいって思ったし。幸せじゃないことも知ったら、ほっとけないです。」
だから、気持ちを伝えました。と。
そんな風に真っ直ぐに見ないで。
私は。
そんなに大事にされるような、かわいらしい子でもないのに。
なんで涙がこぼれてしまうんだろう。
なんで。
嬉しいと思ってしまうんだろう。
「待って、くれる、、の？」
「はい。」
“さっき言った通りです。俺、待ちますから。”
そんなに泣かれたら帰れないよ、と。彼は、私の涙を、何度も指で拭ってた。
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みち(プロフ) - うみ♪さん» うみ♪さんコメントありがとうございます。以前も読んでくださってたんですね。不思議なめぐり合わせ、とても嬉しいです!また読んでやってくださいね。 (2021年1月31日 15時) (
レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
うみ♪ - こんばんは！初コメです！ケンティーメインのお話の時から好きで、ずっとまた作品見たいなあと思っていてひーくんメインのお話で覗いて見たら作者にみちさんのお名前が！！こんなことってある！？ってなりました！過去作も読ませてもらってます！ (2021年1月31日 0時) (レス) id: ebee9b3126 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。このふたりには幸せになってほしいので。その後を書くことにしました。これからもよろしくお願いします。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 続編ありがとうございます。幸せな2人の今後の展開がとても楽しみです。更新ありがとうございます。 (2020年8月24日 22時) (レス) id: f071218485 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - おこりさん» コメントありがとうございます。更新なかなかできない時もあったのでお待たせしていたかもしれませんが、読んでいただいて嬉しいです！また番外編書くつもりなので、また読んでやってください！ (2020年8月17日 12時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みち
| 作成日時：2020年2月24日 21時
