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それから、急いで美南ちゃんと一緒に営業部のみんなのスケジュール押さえたり割り振りを考えたけど。さすがに深夜残業はさせられないから22時前に美南ちゃんには帰ってもらって。
再度スケジュールの見直しをしていたけど、どう考えても人手が足りない。
「…無理があるよね。」
私だけになったオフィスで大きなため息をついた、そのときだった。
「誰かいると思ったら、Aさんだったんだ。」
「え、岩本くん…?」
ドアの所に立ってくしゃっと笑いかけてくる姿に、私も自然と笑みがこぼれた。
「こっち、来てたの?」
「今日専務に報告する日で、さっきまで上で会議してたんです。」
「そっ、か。大変だね遠いのに。」
「Aさんこそ大丈夫なんですか?」
岩本くんがいる。
ただそれだけで。
疲れた心も体も少し、楽になるんだ。
私の席までやってくると岩本くんは、パソコンの画面をチラッと見て、
「それ、人数足りなくないですか?」
「うん…私がみんなに連絡したつもりで忘れてて。こんなことになっちゃったの。」
「忘れるなんて珍しいですね。…だから大丈夫なんですか?って聞いてたじゃないですか。」
「うん、ごめん大丈夫じゃなかった。」
「あーもうこれ絶対足りないっすね。」
「そうなの。お店の営業時間があるから早朝とか深夜には持って行けないし。どうしよう、って。」
隣で眉間にシワを寄せながら、パソコンとにらめっこする岩本くん。
「うちはどう考えても人が足りないんで宅配便で送ることにして部長の許可取りました。」
「そうなの?よく許可降りたね。」
「無理なものは無理なんで、って押し通しました。」
「そっか…どうしよ納品日早めてもらうか、」
「いや、それは無茶でしょ。」
分かっていたけど、どうしようもない状況にため息しかで出ない私に、
「俺、手伝いますよ。」
そう言い切ると、社用車の一番大きなバンの使用時間をメモに書いてホワイトボードに貼り付けると、使用者岩本と書き加えた。
「いいの?」
「無理だったらしません。俺この日は空いてるし、たまには顔出してって言われてる取引先あるんで、挨拶に行くって言えば問題ありませんから。」
「ありがとう…、ごめんホントに迷惑かけて…。」
もう自分の至らなさが嫌になる。
頭を下げた私の髪に岩本くんの手が触れて。
何度も優しく、撫でてくれた。
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みち(プロフ) - うみ♪さん» うみ♪さんコメントありがとうございます。以前も読んでくださってたんですね。不思議なめぐり合わせ、とても嬉しいです!また読んでやってくださいね。 (2021年1月31日 15時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
うみ♪ - こんばんは!初コメです!ケンティーメインのお話の時から好きで、ずっとまた作品見たいなあと思っていてひーくんメインのお話で覗いて見たら作者にみちさんのお名前が!!こんなことってある!?ってなりました!過去作も読ませてもらってます! (2021年1月31日 0時) (レス) id: ebee9b3126 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。このふたりには幸せになってほしいので。その後を書くことにしました。これからもよろしくお願いします。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 続編ありがとうございます。幸せな2人の今後の展開がとても楽しみです。更新ありがとうございます。 (2020年8月24日 22時) (レス) id: f071218485 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - おこりさん» コメントありがとうございます。更新なかなかできない時もあったのでお待たせしていたかもしれませんが、読んでいただいて嬉しいです!また番外編書くつもりなので、また読んでやってください! (2020年8月17日 12時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みち | 作成日時:2020年2月24日 21時