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…
「…おいしい、こんなガトーショコラ初めて食べたかも。」
「でしょ？俺も初めて食べたとき超感動して、こっちに異動になったのまじで運命だと思いました。」
「運命って、もうホントに甘いもの好きだよね。」
駅前で偶然出会ったあと。
岩本くんは、私がなんでこの街にいるのか何も聞かずに、
“甘いもの食べませんか？”
と、高台にあるカフェに連れてきてくれた。
「良かったです、笑顔になってくれて。」
「え？」
「さっき声かけたとき。Aさん、泣きそうな顔してたから。」
そう、だったんだ。
顔に出ない方だと思ってたけど。さすがに今日の事はこたえた。
…岩本くんに会わなかったら、今頃家で泣いてたんだろうな。
「…この後、良かったら、ドライブ付き合ってくれませんか？」
「え、」
ハンドルを握る岩本くんの横顔を見るのは慣れていたはず。なのに。
何も聞かず隣にいてくれる優しさに、胸の奥をぎゅっと捕まれた感じがした。
夏を間近に控えた海は、傷ついた心に優しく染み込む。外に出て砂浜を並んで歩く。
「もう、やっぱりだめなのかも。」
防波堤に座り。波の音を聞きながら、岩本くんは静かに私の話を聞いてくれた。
「実家に帰っちゃったの、あの人。」
「え、」
「こっちにあの人の実家があって、今日、話をしに来たの。」
子供ができない理由が私にはないことを話しても、信じてもらえないこと。つい、話してしまった。
普段顔を合わせないと言うのもあったし。誰かに言いふらす人じゃない彼に、聞いて、ほしかったんだ。
「Aさんに原因がないなら、違うところにあるとは考えないんですかね。本当に子供がほしいなら誰のせい、じゃなくて。真実を知りたいと思いますけど、俺なら。」
真実を知りたい、なんて。岩本くんらしい答えだと思った。
「…そう言ってくれると思ってた、私も。でも、違ってた。さっきも、向こうの親にまだ若いんだからもうちょっと頑張ってみたらって言われて飛び出して来ちゃった。」
「なんで…。」
「なんで、って。結婚したら嫁なのよ、二人だけのことじゃなくなっちゃうの。そういう、ものだから…。」
これ以上言葉を繋いだら、涙が出てしまいそうで。唇をかみしめた。
波の音の間に、岩本くんのため息が聞こえる。
「なんでそんな思いして一緒にいるんですか？」
真っ直ぐな視線が、痛くて。
もう何も言い返すことが、できなかった。
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みち(プロフ) - うみ♪さん» うみ♪さんコメントありがとうございます。以前も読んでくださってたんですね。不思議なめぐり合わせ、とても嬉しいです!また読んでやってくださいね。 (2021年1月31日 15時) (
レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
うみ♪ - こんばんは！初コメです！ケンティーメインのお話の時から好きで、ずっとまた作品見たいなあと思っていてひーくんメインのお話で覗いて見たら作者にみちさんのお名前が！！こんなことってある！？ってなりました！過去作も読ませてもらってます！ (2021年1月31日 0時) (レス) id: ebee9b3126 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。このふたりには幸せになってほしいので。その後を書くことにしました。これからもよろしくお願いします。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 続編ありがとうございます。幸せな2人の今後の展開がとても楽しみです。更新ありがとうございます。 (2020年8月24日 22時) (レス) id: f071218485 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - おこりさん» コメントありがとうございます。更新なかなかできない時もあったのでお待たせしていたかもしれませんが、読んでいただいて嬉しいです！また番外編書くつもりなので、また読んでやってください！ (2020年8月17日 12時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みち
| 作成日時：2020年2月24日 21時
