11 ページ11
…
静まりかえった部屋。
時計の秒針の音だけが、むなしく響く。
「そんなこと、今言う?」
「え、」
「俺明日から出張って言ったよな?そんなときに話すってどういう考えしてんの。」
「タイミング?もう限界だから話したの、それだけよ。」
ねぇ。いつからそんな冷たい目で私を見るようになったの。
「Aは子供欲しいと思わないの?俺長男だって言ったよね?分かってるって言ったの誰?」
「欲しかったよ、でも、もういらない。私に原因ないんだもん。」
「勝手なこと言うなよ。…俺が原因だって言うのか?」
「言ってない…。」
「言ってるよ。」
愛情なんて微塵も感じない。
そこにあるのは、ただのプライド。
肩を強くつかまれて。壁に追い詰められて。ただ彼が恐怖でしかなくて。
そのあとの言葉はなにも耳に入らず。こんなに結婚したことを悔やんだことはなかった。
もうぐちゃぐちゃだ。
ソファに横になって、気がつけば明け方になっていた。洗面所の鏡に写る私はどう見ても普通じゃなくて。
新婚旅行以来の、有給を使った。
…
「Aさん、大丈夫なんですか?」
次の日出社すると、体調を崩したという言い訳を信じている美南ちゃんが心配そうに駆け寄って来てくれた。
「大丈夫よ、昨日はごめんね。」
「…ホントに大丈夫なんですか?顔色悪いですよ。」
「…、」
まぁ、絶好調ではない。でも仕事は山積みだ。ひとつ、深呼吸をして仕事モードに切り替える。
「ノベルティのサンプル確認しなきゃ。昨日届いたんだよね?」
「はい、これです。」
仕事があって良かったのかもしれない。嫌なこと忘れていられるから。
なんて。
少し仕事を甘く見ていたのは、確かだった。
数日後。
ノベルティを販売店に届ける担当を営業部全員にメールしようとした時に初めて、部長が有休を取っている事に気がつくなんて。
905人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みち(プロフ) - うみ♪さん» うみ♪さんコメントありがとうございます。以前も読んでくださってたんですね。不思議なめぐり合わせ、とても嬉しいです!また読んでやってくださいね。 (2021年1月31日 15時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
うみ♪ - こんばんは!初コメです!ケンティーメインのお話の時から好きで、ずっとまた作品見たいなあと思っていてひーくんメインのお話で覗いて見たら作者にみちさんのお名前が!!こんなことってある!?ってなりました!過去作も読ませてもらってます! (2021年1月31日 0時) (レス) id: ebee9b3126 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。このふたりには幸せになってほしいので。その後を書くことにしました。これからもよろしくお願いします。 (2020年8月27日 20時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 続編ありがとうございます。幸せな2人の今後の展開がとても楽しみです。更新ありがとうございます。 (2020年8月24日 22時) (レス) id: f071218485 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - おこりさん» コメントありがとうございます。更新なかなかできない時もあったのでお待たせしていたかもしれませんが、読んでいただいて嬉しいです!また番外編書くつもりなので、また読んでやってください! (2020年8月17日 12時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みち | 作成日時:2020年2月24日 21時