復讐を誓ったその日から

第20話 ページ21

翼さんと別れて、今は家の中
結局ここまで送ってもらっちゃってなんだか申し訳ない気分だ


……しかし、私があの人のことを名前呼びか

人生何があるかわからないってこういうことを言うのかもしれない




……疲れた
何か精神的に疲労を感じるよ

明日も仕事だし、今日は早めに寝るとしますか


────────────−−−−−−


今日の仕事はまず定期的に放送される番組の打ち合わせから

そのあと、もうひとつ担当しているお笑い番組の収録

雑務も大事な役割もそつなくこなす
いつもと変わらない日常






だけど、唯一違うと感じたのは、あの収録の時に向けられた翼さんの笑顔を思い出してしまうこと、だった


今までにアイドルやタレントの心からの笑顔を見たことがなかった。貼り付けたような笑み。テレビ用の顔。

使い分けているのには感心したが、何だか気味が悪いものにも見えていた


しかし、あの時の翼さんの笑顔。
あれは、心から、というわけではなかったが、今までに見た笑顔の中でも最も印象に残るものだった

それに、あんなに憎くて復讐を誓っていた人の笑顔を何度も思い出すなんて、あの頃は思いもしなかっだろう


前までと違う、といえば、最近感じるこの妙な気持ち

今まで味わったことのないもので、心地よかったり、痛みがはしったり


そして、ついにこんなことを思うようになったのだ






──────翼さんに、会いたい──────


会いたいというより、話したい、と思うほうが正しいのかもしれないが。



連絡先を交換してからかなりの頻度でやり取りをしているが、彼は超人気アイドル。なかなか会えないのが現状である


しかし、この会いたいという感情はきっと恋愛的なものではないだろう思っている


まず第一恋人でもないのに。
それに、翼さんはいい人だが、好きになる要素がない

かっこいいが、それは誰が見ても同じ
優しいがそれは誰に対しても同じ

翼さんは平等な人なんだと思う






……でもこんなに長々と翼さんについて考えることができるのはやっぱり翼さんのことを特別に思っているのだからだろうか？



　

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