復讐を誓ったその日から

第14話 ページ15

『何をです？』


何をいいかげんにやめるっていうの？


翼「俺のことを勝手に嫌って、勝手に憎むのは別に構わない。けど……」



私はこの人の話をわざわざ聞きにきたわけじゃないのに、とか思いつつ仕方ないので黙って聞いてみる


翼「けど、憎いからってそれで人殺しをしよう、ってのは人としてどうか、って言ってるんだよ……！」



『私は、私でいられるためにしたことだと』

奥井翼は私を睨みめつけることをやめようとはしなかった


翼「あんたからすればそうかもしれないけど、こっちからしたらただのいい迷惑だよ。いや、いいってのも変かもな。……自分が自分でいられるために人を殺す？…………あんた、頭おかしいんじゃねぇの？」


端からみればそうなるか
でも私は、そうは思わない

『…じゃあ、迷惑なら、そのナイフで私を殺せばいいんじゃないですか？』



私の言葉を聞いて奥井翼は、はぁ、とため息をつく

「なんでそうなるんだよ…」と言ってあきれた顔でこちらを見る



翼「俺は人を殺したりなんかしない。殺したりしたらそいつはもう何もできない。謝罪の言葉をのべることも罪を償うことも」

ふと顔をあげると奥井翼と目があった
奥井翼の瞳は少し揺れているような気がした
その瞳を見てから、私の心には迷い子が生じはじめた


翼「あの事故のことは本当に申し訳なく思ってる。だから一生かけて償ってく、って決めた。なのに、あんたはそれを阻止しようとしてる。…………それこそ、無意味な行動だと思わないの？」



奥井翼の声は耳から入ってこなかった

ただ、心にまっすぐ届いていた


翼「起きてしまったことはもうどうにもできない。俺が言うのも説得力に欠けるけど。俺を殺したところでお前の気は晴れるかもしれないけど、家族が戻ってくるわけじゃないだろ」


…そうだ
もう…………






会えない




　

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