九条天短編集

U COMPLETE ME 5 ページ45

『ふぅ……美味しかった。ごちそうさま』


天「デザートもすごく美味しかったね」


『これなら毎日食べれます……！』

だって本当に美味しかったから……

天「たしかに美味しかったけど、ボクはAの手料理のほうが好きだよ」


『…………／／／／』

たまに挟まれるこういう台詞が似合うんだよね、天は





天「もう食べ終わったことだし一回外に出てみようか」

『いいね！行ってみたい！』


天「じゃあ行こう」

天は立ち上がるとまたすぐに手を差し伸べてくれた









『風がちょっと冷たいかも』

まだ冬じゃないっていっても私のドレスでは少し肌寒かった

天「ボクの上着、貸してあげるよ」

『ありがとう』

ディナーが終わり、二人でデッキに出てきた
私たちの他に誰もいないから何だかこの世には私たちしかいないみたいだった


天「海、綺麗だね……」

『ほんと、ロマンチック…………』

自然の壮大さに圧倒されてしばらく沈黙が続く



天「こうして二人で海を見てると、ここにはボクたちしかいないみたいだね」

天がそんな言葉を口にした
さっき私が考えていたことと全く同じことを考えていたんだなぁ、って思うと驚いたし、すごく嬉しかった


『実はさっき私も同じこと考えてた』

天「ほんと？」


何だかおかしくなって二人して笑いあった



　




『…………天、今日はありがとね』

天「どういたしまして」

『ほんとすっごく楽しかった』

もう後ちょっとで１日が終わってしまう


『この時が止まって永遠になれば…………なんて』

その言葉を聞いて天は驚いた顔をした
そして私に歩みより優しく抱き締めた


天「ボクも同じこと考えてた」

『え？また？』

また同じこと考えてたことに嬉しく思った
でも本当に心の底から思ったことだった
この旅行が終われば私はただの一般人に戻る
天は大人気アイドルTRIGGERのセーター"九条天"に戻る
私のわがままだけど、もっと二人で一緒にいたい。さっきみたいに笑いあって、手を繋いで。
天がファンに笑顔で「大好きだよ」とか言ってるのを見ると、もちろん焼きもちだって焼くし、不安にもなる
この誰にも邪魔されない幸せな時間を過ごしたい、そう思わずにはいられなかった


天「でも、永遠にはなれない。ずっと一緒にいたいけど、それを叶えることさえ難しい」


ゆっくり丁寧に話す天
すっと心に届くから、魔法みたいだ

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