九条天短編集

U COMPLETE ME 3 ページ43

え…………？

『そんなわけないじゃん！何から何まで準備してもらって本当に感謝してるし、ずっと前からすっごく楽しみにしてたよ！？』

天「それならいいんだけどさ」


何で急にそんなこと聞いてきたんだろう……？
何か変なこと言ったかな？


……もしかして、あのとき私が考えてたことバレたのかな……？

天「A、何か隠してない……？」


『何も隠してない！です！』


天「嘘だ。慌てすぎ。隠そうとしてるのバレバレ。」

でも迷惑かけたくないし

天「ボクってそんなに頼りない……？」

『そんなわけ……！』

せっかくの楽しい休日に言い合いなんかしたくない


けど…………

『言わなきゃ……ダメ？』

天「ダメ」

もう…………

『わかったよ。言う』



すると天の顔がすごくわかりやすく変わった
良い方にね



『こんなに豪華なクルーズ……お金たくさんかかっだろうな、って。私も仕事してるけどそんなの天の足元にも及ばないし。』


あまり良い気がしなくて天の顔を直視できない


『私のためにこんなに使ってくれるのはそりゃ嬉しいけど……本当に申し訳なくて…………』


言い終わった瞬間にぎゅっと目をかたく閉じる
天に何かを言われるのが怖くて少し震えていた







急に左頬に温かみを感じてぱっと目を開く
そこには私の頬に自分の右手を添えていつも以上に優しい顔をした天がいた

しかしその瞳の奥は寂しさと悲しさが混ざりあったような色をしていた



天「そんなことで悩んでたの？」

『私にとってはそんなことじゃないの』

さっきとは雰囲気の違う、優しくて甘い声


天「今日はAのための日。１年に１度しかない、ボクにとって一番大切な日。ボクはAのためなら何だってできる。お金のこともそうだけど苦しいことも辛いことだって全部。」


優しいけど少しだけ苦しそうな声
天は我慢しているのかもしれなかったけど私にははっきりとわかった


天「ボクはAを幸せにするためにここにいる。だから、笑ってよ。どんな顔も好きだけど、やっぱり笑ってる顔が一番だから」


本当に申し訳ないな
こんな特別な日に辛い思いさせちゃって

『……ごめんなさい』

こう言った瞬間に天の表情がすっと真剣になった

天「今日は１日謝るの禁止ね」

『えっ……？』

真剣だった天の表情もすぐに柔らかくなった

天「今日は二人で笑いあって楽しむ日。わかった？」


『うん……！』


やっぱり天には敵わないな……






　

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