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29話 ページ29

「A様、今まで何かお手入れは?」

前髪をクリップで止められ、美容室同様おでこまで露わになる。

そこにはまだ傷跡が残っていた。

「まあ…痛々しい。大丈夫ですか?」

ソッと店員の手が触れるが、今はもう痛みもない。

『えっと、大丈夫です。お手入れは何も…』

「えぇ!?それにしてはお肌がきれいですね!」

『そうでしょうか…』

「はい!でも高校生と言えど、多少お肌には気を遣った方がいいんですよ。」

『はあ…』

「少なくとも化粧水や日焼け止めくらいは…」

今まで無縁な世界だったメイクやお手入れの話でAの頭はショート寸前だ。

「私達で見繕った化粧水を帰りに渡しますので、使ってみてください。」

『いえっだけど…私お金は…』

「あら、そんな事お気になさらず!タツキ様のご友人から料金を頂戴するわけにはいきません。」

『そんな!申し訳ないです!』

「A様、ありがたく好意を受け取ることもいい女の鉄則ですわよ。」

1人の店員が「ねえ?」と他の店員にも問いかければ、笑顔で頷かれてしまう。

『そういうものなんですか…?ありがとうございます。』

腑に落ちない物の、ありがたくお礼を告げれば満面の笑みが返ってきた。

爪の手入れとメイクが同時進行され、あっという間に完成する。

差し出された鏡を恐る恐る覗くと…

『傷が…なくなってる…』

額の青あざと傷が見事に消えていた。

目元はマスカラとアイシャドウで大きくなり、頬にはほんのり赤みがさしている。

それだけでも元の印象とは随分と違った。

『プロって凄いですね…』

鏡を持っている手は、爪がピカピカと輝いている。

それをじっくり見ながらぽつりと呟けば、嬉しそうな笑顔の店員たち。

「Aさんはお顔のパーツが整っているので、少しだけ手を加えただけです。」

『いえ、私に限ってそんな事ありません。皆さんの腕が素晴らしんです。』

「では、タツキ様達の所へ戻りましょう。」

『何となく…目がバサバサ…します。』

初体験のマスカラにパシパシと瞬きを繰り返すA。

「そのうち慣れてきますよ。」

『触っちゃいそうです…』

「我慢なさってください。」

視界に入る睫毛を気にしながら、店員と会話していると…

「うわぁ…」

「まじかよ…」

と前方から驚きが漏れ出たような声が。

見れば、いつの間にか人影が増えている。

『せっ先生…!?それに神生君と泉君も…』

そこにいるのがケント達だと分かると、Aの顔がカッと赤くなった。

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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時

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