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15話 ページ15

あの後、返事を曖昧にしたまま執事さんに寮まで送ってもらう。

全ては話さなかったし、九瓏先生も深くは聞いて来なかった。

部屋に入り痛む体もお構いなしにベッドへ倒れ込んだ。

そのまま目を閉じる。

今日は体も心も疲れているみたいだ…



誰も助けてくれないと思ってた。

暗い暗い空間に聞こえてくる声は…

中学の時の担任の声。

「Aさん…確かにいじめはいけない事よ?」


「だけどね…そのー…」


「あなたにも原因があるんじゃないかしら?」


「ほら、その長い前髪とかっ。あとはもっと積極的にお友達に話しかけたり!」


「そうよ、もっと明るくした方がいいんじゃないかしら?」


「皆もきっとあなたを誤解しているだけで…」


「ね?先生がいくら言っても、あなたが変わらないと…」


分かってる。

分かってるよ。

結局、皆そう言うんだ。

どうして私がこんな格好をしてるのか知りもしないで。

私をいじめている子達の親が怖いから、何も言えない。

教師なんて所詮、保護者の顔色を伺いながら仕事をこなしているだけ。

もう…なにも期待しないよ…


「信じてくれないか?」

誰を?

「先生を…」

だから教師なんて信用できないって。

「なら、1人の人間の俺を信じてくれ。」

無理だよ…

人も信じられない。

私は…私を育ててくれた【先生】しか信じない。

「大丈夫。本当はお前も変わりたいはずだ。」

「俺なら、変えてやれる。お前を助ける。だから…」



「俺を信じろ。」



その時光が差し込んだ気がした。

ハッと気が付けば、いつものベッドの上。

ツツーっと何かがこめかみをつたい、慌てて拭えば濡れていた。

『どうして…泣いてっ…』

自分でも理由の分からない涙が次々と溢れてくる。

『梅先生…私どうしたらいいの…教えてッ』

ぽたぽたと落ちる雫がベッドを濡らす。

気が付けば呟いていた。

返事なんてないのは分かってる。

いつの間にか空気に溶け込むように努力した。

傷つけられて、痛い思いをするより、この方がよっぽど楽だった。

誰の反感も買わないように、不快な思いをさせないように。

めんどくさい仕事も一つ返事で引き受けた。

逆らったりすれば、何をされるか分からない恐怖から。

顔も隠した。

それを望んだ人がいたから。

私の顔は罪なんだそうだ。

私は私を殺して生きてきた。

それをいまさら…どう変われって言うんだ。


「変われるものなら変わりたい」


本音は心の奥深くに鍵をかけて蓋をした。

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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時

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