37話 ページ37
逃げなきゃ、と頭では思うのに…
体はがちがちに固まり上手く動けない。
かろうじて小さく後ずさっていれば、相手はへらへらと笑いながら近づいてくる。
「あれ?大丈夫?震えてるよ?」
「お前が怖いからだろ。」
「人の事言えねーよ。」
彼らの手が伸ばされ、寸前で私の手を掴もうとした時…
トンっと体がぶつかった。
壁よりは柔らかく、暖かさも伝わってくる。
「おっと、悪い。A、大丈夫か?」
それは安心する声で、名前を呼ばれた瞬間に緊張が安堵へと切り替わる。
『けっ…ん__せんせっ…』
咄嗟に先生の白衣をギュッと握れば、不思議そうな顔をしていた。
紫「おっお前ら、Aに用事かー?」
「いやっ!何でもないっす!」
紫「そうか?」
「はいっ!じゃ、俺ら帰りまーす。」
「先生、さよならー。」
紫「気をつけてなー!」
先ほどまでのギラギラした笑顔は姿を消し、なんでもなく振る舞う彼らは先生に挨拶をすると帰って行った。
しかし…
「また今度ね。」
去り際に呟かれた言葉は、確かに私の耳に届く。
そのせいでまた体が震え始めた。
紫「A…?具合でも悪いのか?」
『ちがっ…あのっ!』
紫「ん?」
なんて話せばいいんだ…
また襲われそうになった…?
けど、そんな事言っても証拠がないし、困らせるだけかもしれない。
何より…先生に嫌悪感を抱かれなくない…
紫「おーい?Aー?」
『ぃぇ…いえ、なんでもないんです…』
握っていた白衣をそっと放すと、そこには皺が出来ていた。
『あっごめんなさい…』
紫「気にすんな。それより、本当に何でもないのか?」
『はい、全然。それより先生は何してるんですか?』
紫「そうだそうだ!お前に用事あって。」
『私に…?』
放課後、部活も始まっているのに、先生が私に何の用だろう?と首を傾げる。
紫「この後、時間あるか?」
『はい…ありますけど…?』
いうが早いか、先生に手首を掴まれる。
紫「よし!ちょっと付き合えっ」
『えっちょ、先生?』
引きずられるも同然で着いたのは、ダンス部。
中に入れば、皆真剣に練習をしていて私たちの存在には気づいていないようだ。
その真剣な姿に目を奪われていれば、先生に声をかけられる。
紫「どう?あいつら。」
『凄いです。見るの初めてで…熱、というか、圧、というか。本当にすごい。』
紫「ダンスって面白いだろ?」
『はい、凄く素敵ですね…』
私は踊っている彼らから目を離せずにいた。
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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時