7話 ページ8
トントンsaid
トントン「行ってしもうたな…」
つくづく自分は阿保やと思う。
一人の人間に恋をして、そして堕天しかけるなんて。
そして今なお、想いを伝えなかったことを後悔している自分が居ることに＿＿＿
トントン「なんか呆れを通り越して笑えて来るわ」
一人でボソッと声を漏らす。
勿論返ってくる返事もなく、ただ一人朝焼けを見つめる。
もうすぐ、戦争が始まる。
彼女は自ら望んで、そこへ向かった。
もう、きっと彼女が帰ってくることはないだろう。
＿＿＿本当にこれで良かったのだろうか？
目を閉じ、今まであった事を思い出す。
笑ったり、喧嘩したりして。
最初は、興味本位で話かけたつもりが、何時しか彼女に魅力に魅せられ。
でも、きっと人間と天使の恋なんて上手くはいかない。
だって、俺達と彼女達との時間軸はあまりにも違い過ぎるから。
人間にとっての10年とは長いモノなんだろうが、正直俺にとっての10年なんてつい先ほどの事でしかない。
そんな、俺達が上手くいくはずがない事は百も承知だった。だから、何も言わずに彼女を送り出した。
きっと、伝えてしまえば後悔すると知っていたから。
けれど、彼女と言う存在は、あっという間だったはずなのに俺にとって大きな存在になっているようで。
トントン「気づけばいつも君を探してる」
居なくなって初めて自分が相当、重症だった事に気づく。
トントン「ハハッホンマ阿保やわ。」
でも、それでも君が好きだから。
最後にもう一度だけ君に会おう。
彼はそっと、まだ自分の白い部分の羽を抜き、フッ息をかける。
そうすると羽は眩い光を放ちビジョンの様な四角い形になり、映像を流し始めた。
そこには、血を流して倒れている彼女とそれに近づく敵兵の姿があった。
色々考えている間に、数時間が経ったようだ。
彼の中にはまだ、迷いがあったしかし＿＿＿
彼女がそっと口を動かしたのを見逃さなかった。
そして、時計台には漆黒と純白が混ざり合った羽が一枚ひらりと落ちて来た。
もう、そこには天使の姿は何処にもない。
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作者名：ユキ猫 | 作成日時：2017年8月29日 4時
