Story.9 ページ10
翌朝、朝食の匂いに目が覚める。
1度、2度、と目をこすって仰向けになると……知らない天井。
「…………えっ！？」
ぼーっと天井の木目を見ているとだんだん目が冴えてきて、ハッとして飛び起きる。
畳張りの広い和室の真ん中にポツンとひかれた布団に私は寝ていて、昨日相澤先生と飲んでいた記憶までしかない私は顔を真っ青にしながら首を捻る。
……どこだここは。
服を見ると、昨日のままの服装で安心する……のも束の間で、ガンガン痛い頭と落とし忘れた化粧に大きくため息を着く。
とりあえず、と布団から起き上がり、畳んだ後で美味しそうな食事の匂いがする方へと足を向けた。
*
そろーっと部屋の障子を開けると、私に気づいた目の前の女の人が笑顔で手招きする。
……知らない人だ。
ペコッとお辞儀をして部屋の中に入ると、部屋の入口からは死角になっていたちゃぶ台の角に、見覚えのある顔。
「轟くん……？……なんで？」
「まあまあ、榎本さん座って。朝食にしましょう」
「えっと……」
「あっ、轟焦凍の姉です。冬美っていうの」
「あっ……お家に泊めていただいてありがとうございました。榎本Aと言います」
「いえ、こちらこそこの間は焦凍を家に泊めてくれてありがとう」
轟くんのお姉さんは人の良さそうな方だった。あまり雰囲気は轟くんと似てはいなかったけれど、顔立ちはそっくりだ。
「榎本さん」
私が冬美さんと話していると、私に声をかけてきたのは轟くんだ。
「なに？」
「すまない。昨日榎本さんの昔話を、聞いた」
「えっ！？」
少し困ったような表情で、謝りながらそう言った轟くんの言葉に驚いて大声を出してしまい、慌てて冬美さんに謝る。
「……誰から？相澤先生？
……そもそもなんで私轟くんの家にいるの？昨日会った記憶がないのだけど……。」
「相澤先生と飲む約束の場所に行ったら榎本さんが潰れてて……昔話をしてる現場に居合わせた。
ひとりじゃ帰らせられなかったから家に連れて帰った」
「昨日の飲みの席で……？轟くんいたっけ……？」
頭をひねって考えても昨夜の記憶は何も無くて。それどころか思い出そうとすればするほど二日酔いの頭がガンガンと痛む。
が、轟くんの言っていることが事実であることは状況から明らかで。
「……大変ご迷惑をおかけしました、ありがとう」
轟くんにそうお礼を言った後、轟家で朝食をいただいた。
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作者名：近藤。
| 作成日時：2021年5月28日 2時
