Story.3 ページ4
「げぇ……イレイザー」
「イレイザーヘッド、お知り合いですか？」
イレイザーヘッド、もとい相澤先生の顔を見るなり表情を歪めた私と無表情のままのイレイザーを見比べてそう聞いた彼は、なんとなく冴えないそばかすの男の子だった。
「ああ、俺の元教え子だ」
「……まさか彼が助けに来なかった理由って……」
「俺が手を出すなと言った。合理的だろう」
私の様子を見ながらあたふたしていた理由って、助けたい気持ちと相澤先生との板挟みになっていたからか。
「私が一般人やってるって知ってるくせにこの仕打ちですか、イレイザー。酷くない？」
「一般人はやろうと思ってやるものじゃない」
「まあ、そんなことはどうでもいいわ。えっと……」
そばかすの彼の顔を見ながら首を傾げると、彼はビシッと立って挨拶してくれた。
「えっと……デクです！」
「デク……なんとなく聞いた事あるようなないような……」
「すまんな緑谷、コイツヒーローに疎いんだ」
「……昔は憧れてたはずなんだけど……なんで憧れてたかも覚えてないのよ。
ああでも、昨日1人名前覚えたわよ。ほら、イケメンヒーローのなんだっけ……ショート？」
「……！轟くん！」
「……知り合い？」
「高校の同級生で同期です！」
「えっと……デク君、君いくつ？」
「20ですけど」
「ってことは4つ下か……ギリギリ合法？セーフ？射程圏内？」
私がそんなことをブツブツ言っていると、突然デクくんが私を指さしながら尻もちをついた。
「僕らの4つ上って……シ……シンリンカムイを筆頭に実力派揃いだった雄英高校のあの世代で雄英体育祭3年連続優勝してた……
「……！？」
なんで体育祭のことなんか覚えてるの！？なんて、考える暇もなく、どこからともなく取り出したノートを彼は私に向けた。
「えと……握手……じゃなくて、サイン！サインください！」
「私一般人、君ヒーロー。普通逆じゃない？」
「こんな所で会えるとは……！僕……あの、雄英体育祭見てから貴女がヒーローになったら応援しようって決めてて！！」
「だから、私、一般人！」
助けを求めて相澤先生の方を向いたつもりだったけれど、そこには誰もいなかった。
私一般人……なんていいながら渋々ノートにサインをして、デクくんと別れて家に帰った。
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作者名：近藤。
| 作成日時：2021年5月28日 2時
