恋とケーキと恋愛と【轟焦凍】 (ページ16)

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Story.15 ページ16

目の前の轟くんは、立ち上がって、後ずさった私の目の前までやってくると私の手を取る。

「Aさん、初詣行こう」

私はと言うと、グルグルと回る脳内の整理がつかずに、初詣どころではなかった。

しかし、告白その他の思考を放棄した頭では初詣の意味すら理解ができていなかったようで、轟くんの誘いにあっさりと立ち上がって、服を着込んで外に出た。

冷たい夜風が頬を撫でて、火照った顔を冷ます。

帽子を深く被って、眼鏡をかけて、マスクをした彼は有名人で、変装をしているのだろうと容易にわかった。

夜中だというのに屋台が立ち並んで人がごった返す神社の境内で私と彼がはぐれていないのは、家からここまで彼が1度も私の手を離していないからだ。

何事も無かったように、初詣は進んでいった。

お賽銭を投げて、健康を祈って。

お神酒をもらって、おみくじを引いて。

屋台でみたらし団子を食べて、おしるこを飲んで。

そんな自然な流れの中で、私がふと思ったことと言えば、いつからか自然に下の名前で呼ばれていたという事に気づいた、ということだけだった。