最後の審判2【ワールドトリガー】

Story.35 ページ37

地下にある遠征艇は、迅の指示で小南、太刀川、風間さん、鋼が抑えに行ったらしい。

アタッカーランキングの上から4人が勢揃いだ。
そんなところに私は必要ないだろう。

前線の大量のトリオン兵は私がゴリゴリ削った。
屋上に犬っぽいトリオン兵も湧いているみたいだが、こちらは荒船とレイジさんが居るし、オールラウンダー勢も控えていて問題ないだろう。

あとは、人型トリオン兵の中ですばしっこいやつが湧いている、とも話が入ってきているが、こちらは木虎と双葉が向かった。問題ない。


つまり、だ。

迅の予知では“民間人に被害は出ない”との話だったが、1つ民間側に向かっているトリオン反応。

皆が無視しているが、流石に無視は良くないであろうということで誰か向かった方がいいそこに、私が向かわざるを得なくなるという話である。

まず第一に、各地の戦況を私より正確に判断している人は、本部から映像を見ている忍田さんくらいであろうということ。

戦況を見渡した上で私がここに行かざるを得ないことを、予知か、予測かを建てた上で迅は私に「ヒュースを頼む」と言ったのだ。

つまり、この単騎の敵兵にヒュースが接触しに行くのだろう。

そして、さらにヒュースに懐いていた陽太郎もそこへ向かうのだろう。目的は、知らないが。


私は迅に甘い。自覚がある。

そうでなければ今回の件でも面白そうな地下遠征艇の戦闘の方に行っていたし、遠征帰りに理由も聞かず、見知らぬブラックトリガーのネイバーを庇って本部と喧嘩したりしない。

正論で殴ってきたり、無茶振りをしてきたりする迅が、誰よりも私に甘いことを知っているからだ。

ボロボロで玉狛支部に転がり込んだあの日も、妹が目を覚ましたあの日も、死んだあの日も、迅がいなければ私はおそらく潰れていた。

だから、迅が困っているのならば、助けられる私であろうと決めているのだ。



レーダーを追って敵のいる場所に着くと、そこには既にヒュースと陽太郎が居た。

陽太郎の腹を貫くブレード、すました顔で敵兵に話しかけるヒュース、憎しみの籠った表情でヒュースを罵倒する敵兵。

どういう状況だこれは。


少なくとも、ヒュースが使っているのはボーダーのトリガー、スコーピオンだ。

ボーダーのトリガーには安全装置が付けられていて、人に危害を加えることはできない。つまり、陽太郎は無傷だ。


……茶番だな。そんなことを思いながら私は屋根の上から、ヒュース達がいる地面へと飛び降りた。

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